車載用高耐熱性柔軟ポリウレタンの開発

近年、自動車の電動化や自動運転技術の進展に伴い、電装部品※の搭載数が増加しています。電装部品の多くは、熱や湿気、衝撃などからの保護を目的に「封止材」による封止処理が施されています。今後ますます需要拡大が見込まれる電装部品の封止材用途として、高耐熱性柔軟ポリウレタンの開発に挑戦しました。

  • ECU(電子制御ユニット)、センサー、カメラなどの自動車に装備されている電子機器の総称

目次

この研究になぜ取り組んだの?

ポリウレタンの可能性を広げ、自動車の先端機能を支えたい

近年、自動車の電装部品は、車内スペースの確保や車体の軽量化のため、小型化・集積化が進み、また高性能化に伴い搭載数も増えています。電装部品は、外気温や自己発熱などの影響により、最大で-40℃~150℃まで温度が変化します。そのため、封止材にも幅広い温度域で長期間安定して機能することが求められます。現在、封止材の材料は耐熱性と低温柔軟性を両立できるシリコーンが主流ですが、シリコーンに含まれる物質の影響により通電障害や電装基材との接着不良などの課題が存在します。これらの課題を解決するため、影響物質が含まれていない「ポリウレタン」で、-40℃以下の低温柔軟性、150℃以上の耐熱性を満たす開発に着手しました。なお、対応可能な温度域の観点でシリコーンはポリウレタンよりも優れているため、ポリウレタンで代替するという発想は今までに例がなく、未知なる挑戦でした。

封止材とは?

封止材用途における今回の開発品の位置付け

開発品のポイントは?

トレードオフの関係にある物性の両立

ポリウレタンは、原料となるポリオールとイソシアネートの反応によって得られる樹脂で、その種類の豊富さから幅広い物性設計が可能です。ポリオールには、高耐熱であるポリカーボネートジオール(PCD)を選定して検討開始しました。しかし、当社の既存PCDでは-40℃の低温領域で硬くなる傾向があり目標値を満足できませんでした。そこで、-40℃で柔軟性にも優れる新規PCDの開発に着手。-40℃の低温柔軟性と150℃の耐熱性はトレードオフ、つまり一つ得たら一つ失うという物性関係であるため、両立させるのは非常に大変でした。最適な原料の選定、原料の適切な量での組み合わせなど、仮説を立てながら数百回繰り返し評価をして目標物性をクリアしていくのは、まさに泥臭く根気のいる作業でした。

もう一つの壁が、粘度の調整です。封止材は、電装部品に注入する際の作業性の観点から低粘度であることが求められますが、低粘度化すると耐熱性が悪化する傾向に…。そこで耐熱性を維持したまま減粘するために、これまでにない発想で新規PCDの骨格をチューニングすることで目標粘度に到達できました。

このようにトレードオフの関係にある複数の物性を満たすために根気強く開発を進めた結果、シリコーンと同等の-40℃の低温柔軟性と150℃の耐熱性を有しながら通電障害などの課題もなく、さらにシリコーンよりも安価で提供できるポリウレタンの開発に成功しました。

この研究を通して感じたことは?

末端製品を意識した、きめ細かなヒアリングの重要性

当社は原料メーカーであり、封止材を使用する電装部品メーカーとの間に封止材メーカーが介在します。そのため、ポリウレタンに求められる物性は把握できても、封止材についての正確な情報を得ることは困難である中、封止材の特許調査や関係者へのきめ細かいヒアリングを通して末端製品を意識したポリウレタンを開発しました。特に関係者とのヒアリングでは、物性だけでなく市場の要望など多くの情報を得ることができ、ユーザー目線に立った開発につなげることができました。

今回の研究は どう生かされるの?

自動車の先端機能を支える電装部品の信頼性に貢献

本開発品は、-40℃~150℃の幅広い温度域に対応できる初のポリウレタンです。そのため、市場でのインパクトは大きく、封止材以外の用途にも展開が可能と考えています。現在は、封止材と同様に電装部品に使用される接着剤や放熱ギャップフィラー※用途への展開を検討しています。本開発品は、シリコーンに匹敵する耐熱性と低温柔軟性を有しながらも、シリコーンより安価に提供でき、かつ安全性も高いことから、今後ますます進化していく自動車の先端機能を支える電装部品の信頼性に貢献できることを期待します。

  • EVのバッテリーに塗布することでバッテリーパックの隙間を埋め、放熱を補助する役割を果たす

開発品

関連情報

研究技術報告

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