亜鉛排水処理剤(TX-Z1)の開発

工場から出る排水には、人体や環境に悪影響を及ぼす汚染物質が含まれていることがあり、水質維持の観点から、基準値以下に適切に処理してから河川や下水などに排水することが法律で義務付けられています。中でも「亜鉛」は排出基準が厳しく定められており、その処理は多くの現場で課題となっています。当社の重金属処理剤の一つとして、既存の排水処理剤よりも優れた亜鉛処理性能を持つ「TX-Z1」の開発に挑戦しました。

目次

研究に取り組むきっかけは?

顧客の現場で知った実態

亜鉛はさび止めやめっきなどさまざまな用途に使われますが、重金属※1の一種で、人体や環境に影響を及ぼす恐れがあります。特に水生生物への影響が大きいことから、排出量を2mg/L以下にすることが法律で定められています。しかし、電気めっき※2業においては、排出基準の達成が困難として暫定基準(4mg/L以下)が運用されており、将来的な一般基準(2mg/L以下)への移行を見据えた対策が業界全体で求められています。しかし、当社既存品の排水処理剤を使用しても排出基準を達成できないため、電気めっき会社へ訪問し、直接工場を確認することにしました。そこでは、めっきの品質向上のために多くの薬品を添加していること、また排水箇所が1 ヵ所であるために、さまざまな成分が混入している実態がありました。そのため、排水処理剤が他の薬品(妨害物質)に亜鉛との反応を妨害されてしまい、亜鉛に対する効果が十分に発揮できていないことが分かりました。その他、排水処理剤の添加量を増やすと、排水中の汚泥が沈降せずに浮遊し、処理水をろ過する際にフィルターの目詰まりが発生するなど、亜鉛処理以外にも切実な問題があることが浮き彫りになりました。

  • 比重が4~5以上の金属元素の総称。代表的なものでは、鉛、水銀、亜鉛、ニッケルなど。

  • 電気を利用して鉄、アルミニウム、ステンレスなどの表面に、薄い金属の膜をコーティングする処理のこと。自動車部品の耐久性向上、スマートフォンやパソコンなどの電子回路など、私たちの豊かな生活を支える不可欠な技術。

開発に成功したポイントは?

チームの連携による地道な検証

まず、妨害物質を特定するために、排水中の成分を解析することから始めました。成分解析は東ソー分析センターが担当しましたが、解析方法は成分によって異なるため、排水にどのような成分が含有されているかをある程度想定しなければなりません。しかし、めっきの品質向上のために使用される薬品は、各社のノウハウであることから教えてもらえず、手探りで成分を特定する必要がありました。そこで、特許や文献を読み込んで成分を推測し、その仮説を基に解析を進めました。この地道な作業を繰り返し行い、排水中の妨害物質の絞り込みに成功しました。その後、それらが排水処理にどのように影響しているのかを明らかにするため、数十種類ある妨害物質のそれぞれの含有濃度の調査、処理剤への影響、亜鉛に反応する処理剤の最適量を繰り返し検証 …。その作業は、一人では実現困難な長い道のりだったため、同じグループの研究員の力も借りながら、役割分担をし、日々結果を共有していきました。

こうした取り組みの結果、現在のTX-Z1の組成にたどり着くことができました。TX-Z1は、電気めっき排水の亜鉛排出基準2mg/L以下を達成するだけでなく、亜鉛処理性能が上がったことで、既存の排水処理剤で問題となっていた汚泥の沈降性と汚泥のろ過性にも優れる排水処理剤となりました。

この研究を通して感じたことは?

「顧客訪問」と「営業部門との連携」の重要性

顧客目線に基づいた研究開発の重要性は、頭では理解していたつもりでしたが、実際に営業部門と協働して顧客訪問を続けた結果、顧客との直接対話を重ねることで見えてくるニーズや真の課題があることを実感しました。こうした気付きは、研究所内では決して分からない重要な情報となるため、研究者も積極的に顧客訪問をするべきだと感じました。また、営業部門との連携の重要性について改めて気付けたことも、今後の研究開発の糧になると考えています。営業部門が全国に数多くあるめっき会社を訪問し、顧客開拓をしてくれたことで、TX-Z1の開発を進めることができました。

今回の研究結果はどう生かされるの?

次なる社会課題の解決へ

日本には、1,100社以上のめっき会社があります。めっき業界では亜鉛処理に対する大きな課題が顕在化していましたが、1社1社の声を丁寧に聞き、業界全体の課題解決に向けて有効な薬剤を開発しました。この亜鉛排水処理剤TX-Z1を世の中に広め、より安全な水を社会に提供していくことを目指します。

関連情報

研究技術報告

製品紹介ページ

ニュースリリース

おすすめ記事