東ソー株式会社

新規臭素系難燃剤の開発

開発の背景

身の回りを見渡すと、家具、電化製品、衣類、自動車など数多くのプラスチック製品や部品があることに気付きます。プラスチックは合成樹脂とも呼ばれ安価で加工しやすい特徴があり、様々な産業分野で応用され、私たちの生活とは切り離せない素材です。

プラスチックは石油を原料として主に有機物で構成されており、そのもの自体は燃えやすいため、火災による物的・人的被害を抑える目的で用途・使用環境によって厳格な難燃性規格が制定されています。特にスマートフォンを始めとする電子機器については、デザイン性や軽量化のためプラスチックが多用される一方で、電気エネルギーにより発熱・発火しやすく、プラスチックを燃えにくくすることは必須です。

身の回りのプラスチック類

燃えにくくする技術が使用されています。

パソコン
スマートフォン
自動車
コンセント

難燃剤とはプラスチックなどに添加、もしくは反応させることで、プラスチック自体を燃えにくくすることができます。ハロゲン系(塩素、臭素)、リン系、窒素系、無機系が広く知られており、加工性や性能、プラスチックとの相性などにより選択されています。臭素系難燃剤はその名の通り、臭素から作られる難燃剤を総称しており、プラスチック用難燃剤の中でもとりわけ難燃効果が高いことがわかっています。

東ソーは、1941年に国内で初めて海水から臭素を取り出すことに成功しており、その誘導品である臭素系難燃剤は1977年から生産を始め、各種プラスチック材料に使用されてきました。

臭素

海水中に含まれる臭素イオン(Br-)を反応抽出することによって得られる。

臭素系難燃剤の課題

臭素系難燃剤は生産コストが安く、少量でも難燃性が発揮できる低分子タイプを中心に使用されてきましたが、法規制によってその種類は変遷してきました。特に1990年代以降は、環境面や安全面に関して様々な調査検証が行われ、新たな科学的見解に基づいて、低分子タイプ臭素系難燃剤の一部は使用されなくなってきました。

一方で、難燃性を求められるプラスチックの用途や需要は、IT機器の発展や自動車の電装化と共に拡大しています。このような課題から、昨今では難燃性能と環境安全対応を両立させた臭素系難燃剤が求められています。

安全性の高い高分子タイプ臭素系難燃剤の研究開発

上記のような背景から、近年は環境面や安全面に配慮した高分子タイプの臭素系難燃剤が好まれるようになってきました。そこで東ソーは、安全性が確認されている物質を構成単位とした新規の高分子タイプ臭素系難燃剤に注目し、開発することを計画しました。

検討を始めた当初は重合反応が思うように進まず、想定した通りの高分子を得ることはできませんでした。どのような反応条件に設定しても、重合反応が途中で停止してしまうという課題に直面しました。しかし、それから数年の原因解析、試行錯誤を繰り返し、重合末端基を工夫することで、最適な重合条件を発見することができました。

このようにして得られた高分子タイプ臭素系難燃剤(フレームカット🄬210HR)の難燃性を評価した結果、既存剤と同等の難燃性を示すことが確認されました。また、プラスチックに配合した際の相性もよく、様々な樹脂に適用できることが分かりました。

難燃性評価
フレームカット🄬210HRを配合したプラスチックの難燃性試験の様子

東ソーは本テーマを通して、生活をより豊かにする新材料の研究開発を進め、社会課題解決に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。

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