新型コロナウイルス関連測定試薬の開発

新型コロナウイルス関連測定試薬の開発

遺伝子検査への取り組み

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年末に原因不明の肺炎として中国で流行が始まり、その後全世界に感染が広まりました。その状況下の2020年2月初めに、厚生労働省より緊急でコロナウイルスの遺伝子検査キットを開発する意思がある企業の募集がありました。診断を行うための検査キットを製品化するには、通常2年程度の時間がかかり、製品を開発完了した時点で感染症の流行が終わっているリスクも考えられましたが、社会的貢献に繋がること、また当社としてもこの経験を今後の製品開発に活かせると考え、開発を決定しました。

開発部門は、若手中心に複数のスタッフで分担する体制を整え、開発に着手してから約半年というかつてない速さで発売に至りました。測定の対象となる唾液検体には測定を妨害する因子が多く含まれており、開発当初はその阻害を取り除くことに苦労しました。また、感染者数の流行の波による爆発的な検査需要増大で、世界的に遺伝子検査用の原材料が不足するなど予想外の事態が発生し、製品化した後も関係各部署は対応に追われました。

新型コロナウイルス感染症は、先が予測できず予断を許しませんが、開発した製品は、とても簡単な操作でコロナウイルスに感染しているかどうかを40分で測定することができます。測定者(医療従事者)の労力を軽減することで、少しでも医療現場に貢献できることを期待しています。

新型コロナウイルスの構造
新型コロナウイルスの構造
自動遺伝子検査装置 TRCReady®-80
自動遺伝子検査装置 TRCReady®-80

免疫測定試薬の開発

国内でも新型コロナウイルス感染症の流行が繰り返される中で、感染等で体内にできる抗体を測定して感染状況を正確に知りたいというニーズが高まってきました。このニーズに対応し、当社は横浜市立大学他との共同研究で、新型コロナウイルスに対する抗体を全自動免疫測定装置上で測定できる4種類の試薬を開発しました。この試薬で測定することにより、過去の感染履歴やワクチン接種後の抗体価の上昇や経時的な変化を迅速に調べることができます。

免疫測定試薬の開発
SARSコロナウイルス抗原キット AIA-パックCL SARS‐CoV-2‐Ag

この開発は、日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)の補助を受けて進められ、完成した試薬は、横浜市立大学が中心となってCOVID-19回復患者の長期追跡を行った「新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査プロジェクト」に使用されました。感染で引き起こされる体内の免疫反応については、当時は未知の部分が多く不安が広がっていましたが、このプロジェクトから数々の貴重な報告が出されました。

また、国内でワクチン接種が始まると、ワクチン接種後の経過を観察する研究に貢献しました。さらに当社は、横浜市立大学他との共同研究で、新型コロナウイルス抗原検査試薬についても開発を進め、2021年9月に販売を開始しました。本試薬は、迅速性に優れ、大量処理にも適しているため、病院の検査室を中心に使用されています。

これらの開発製品は、緊急事態宣言下で行動や生活に制限があった中で、関係者全員がベクトルを合わせ、英知を結集して、短期間で質の高い試薬の開発に取り組んだ成果です。新型コロナウイルスという難敵にバイオサイエンス事業部が立ち向かった証(あかし)ということができるでしょう。

新型コロナウイルス迅速測定への挑戦

関連リンク

研究・技術報告

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