還元性ガスを用いたRu(ルテニウム)配線材料の開発

デジタル化やAIの急速な進展により、半導体はより膨大で高速な処理能力が求められています。
一方で処理量の増加は消費電力の増大につながり、発熱や電力コスト、環境負荷が新たな課題となっています。
こうした課題を解決するため、半導体の配線材料の開発に挑戦しました。

なぜ、半導体の「配線」が重要なの?

半導体の小型化と処理能力の高度化が求められているから

あらゆる電子機器において重要な役割を果たす半導体は、いくつかの種類に分けられます。電子機器の頭脳として計算や判断、制御といった複雑な処理を行う「ロジック半導体」、情報を記憶する「メモリ半導体」、高電圧・大電流を扱える「パワー半導体」などがあります。こうした半導体の性能向上を支えているのが、内部に張り巡らされた「配線」です。

ロジック半導体の配線材料として現在主流なのは、高い導電性を持つ「銅」です。しかし、電子機器の小型化や処理能力の高度化により、半導体の高密度化および微細化が進むにつれて、銅配線は電気抵抗の増加や断線といった課題が顕在化してきました。

そこで、より高性能かつ低消費電力の半導体を実現するために注目されているのが、小型化しても導電効率が落ちず、高耐久性を備えた「Ru配線」です。

  • 耐腐食性や耐熱性が高い貴金属の一種。

開発したRu配線材料にはどんな特長があるの?

酸化性ガスを使わずにRu配線の成膜が可能に

Ru配線は、配線材料(Ru化合物)を半導体基板の上に数ナノメートルの薄い膜を形成することで作られます(成膜)。現状のRu配線の成膜方法は酸素やオゾンなどの酸化性ガスを用いるのが一般的ですが、この方法は基板内部が酸化するため導電性の低下に影響します。

今回の研究ではこの問題を回避するため、酸化性ガスを使わず、水素やアンモニアなどの還元性ガスで成膜可能なRu化合物の開発に挑戦しました。還元性ガスを用いた成膜では、反応性を高めようとするとRu化合物の熱安定性が損なわれ、取り扱いが困難になります。そのため、材料としての安定性と成膜のしやすさを両立させることが大変でした。仮説検証、化合物作成、成膜実験、成膜評価を繰り返すトライ&エラーを重ね、MIセンターと連携しながら解析を進めた結果、還元性ガスでも成膜できるRu化合物を実現しました。

これにより、半導体基板を酸化させることなく成膜できるため、多様な基板にRuの薄膜を形成することが可能となります。

Ru化合物(配線材料)
成膜装置
ロジック半導体イメージ(Ru配線は、赤枠内に使用されています)

今後の研究で目指すことは?

グループ連携も強化して、より高品質・高性能な成膜技術の確立へ

酸化性ガスを使わずに成膜可能な材料の開発には成功しましたが、成膜の均一性や膜質をさらに向上させるにはどうすべきか、より低温で成膜することは可能か、などの課題が残っています。加えて、成膜後の性能面においても、さらなる高性能化を実現するための検討が必要です。

私が所属するグループでは、原材料の合成から成膜評価までを一貫して行える点が強みです。さらに、MIセンターと密に連携が取れる関係にあるため、成膜評価の結果を次の改善につなげるまでスピード感をもって進められる点も大きなメリットです。

今後はグループ内のメンバーに加え、MIセンターをはじめとする他部門や外部とも連携し、専門的な知見を取り入れながら、より優れた材料の探索や成膜技術の確立に挑戦していきます。

今回の研究結果はどう生かされるの?

これからの時代、IT 機器のデータ処理量の増大、将来的なスマート社会の到来を見据え、消費電力のさらなる増加が懸念されています。導電効率が落ちず、高耐久性を備えたRu配線材料は、半導体の高密度化および微細化に貢献できるため、データの処理能力が上がり、消費電力の低減につながります。

今回開発したRu配線材料(Ru化合物)が次世代半導体の原料として採用され、超低消費電力エレクトロニクス機器が実現されることを期待しています。

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