トップメッセージ

グループ一丸となって
社会課題の解決に
貢献することで
企業価値の持続的な
向上を
目指していきます。

代表取締役社長
社長執行役員
山本 寿宣

経営方針

自らの持続可能性を確保し社会に必要とされる企業に

「私たちの東ソーは、化学の革新を通して、幸せを実現し、社会に貢献する。」──この企業理念にも示されているように、当社グループはさまざまな社会課題の解決に寄与する事業の展開を通して企業価値を高めるとともに、すべてのステークホルダーに信頼され、社会から必要とされる企業であり続けることを目指しています。

そのための重要な条件は、しっかりとした経営基盤を確立することであると思います。いくらサステナブルな社会の実現に貢献したいと願っていても、自分自身の経営基盤が不安定であれば、事業の安定的な発展は望めず、結果としてお客さまや株主、従業員といった多様なステークホルダーからの信頼も得られません。その意味で、まずは企業として確かな収益力を確保して自らの持続可能性を高めていくことが、経営者に課せられた重要使命であると私は考えています。

化学産業は大規模な設備投資が必要な装置産業です。同時に原材料価格や製品の需給環境に収益が左右されやすい特性があります。そうした事業特性を踏まえたうえで、持続的な成長を果たしていくために、当社グループでは底堅い需要のある「コモディティ分野(石油化学製品、クロル・アルカリ製品)」と、付加価値の高い「スペシャリティ分野(機能商品)」を両軸に位置付け、2つをバランス良く強化していくハイブリッド経営を成長戦略の基本に据えています。コモディティ分野で基盤となるキャッシュ・フローと利益を確保しつつ、スペシャリティ分野に継続的な開発投資を行って、新たな成長ドライバーを生み出していくハイブリッド経営を今後も継続することで、経営環境の変化に左右されにくい事業構造への転換を着実に進めていきます。

2020年度の業績総括

厳しい環境下でも健全な財務体質を維持

2020年度(2021年3月期)の世界経済は、前年度末から続く新型コロナウイルスの感染拡大によって、各国で社会・経済活動が大きな制限を受け、需要が急速に冷え込みました。下半期以降はワクチン接種の進展により、先進国を中心に経済活動は徐々に回復しつつありますが、景気見通しは依然として予断を許さない状況が続いています。

このような状況のなか、当社グループは3カ年中期経営計画の中間年度(2年目)として、ハイブリッド経営による収益の安定・拡大に努めました。しかしながらコモディティ分野ではコロナ禍影響による需要の縮小や、ナフサなどの原燃料価格の下落に伴う製品価格の軟化によって売上が伸び悩み、スペシャリティ分野でも柱となる診断関連商品や自動車排ガス浄化触媒用途を中心にハイシリカゼオライトの出荷が減少するなど、全体的に厳しい環境が続きました。この結果、2020年度の連結売上高は7,329億円(前期比6.8%減)と、前期から532億円の減収となりました。

一方、利益面については原料価格の低下によって変動費が抑えられたことや下期以降にクロル・アルカリ事業の主要製品の海外市況が上昇したことなどから、営業利益は878億円(同7.5%増)、経常利益は951億円(同10.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は633億円(同13.9%増)といずれも増益となり、営業利益率も12.0%(前期は10.4%)まで向上しました。なお、2020年度はコロナ禍における不測の事態に備えるべく借入を実施していますが、健全な財務体質を維持できていると考えています。

2021年度の見通し

事業環境の変化に迅速・柔軟に対応し中期経営計画の目標達成を目指す

2021年度(2022年3月期)は、中期経営計画の最終年度となります。ワクチン接種の進展に伴って各国のコロナ禍は次第に収束に向かい、中国に続いて欧米諸国やアジア各国でも経済が本格的に回復していくことが期待されますが、米中摩擦の深刻化や過熱気味の金融市場の混乱などもあり、景気の先行きは依然不透明な状況です。

当社グループを取り巻く事業環境についても、コロナ禍の収束状況や国際政治情勢を含め、さまざまな要因により変動する原燃料価格や海外製品の市況、さらには為替レートの動向やコロナ禍で分断したグローバル・サプライチェーンの状況などにも引き続き注意を払っていく必要があります。基本的には中期経営計画策定時に発表した基本方針や投資・研究開発・財務・株主還元などに関する方針は変更せず、先に述べたさまざまな事業環境に注意しつつも中期経営計画の方針に沿って、諸施策を粛々と進めていく考えです。

2021年度の連結業績予想については、売上高8,200億円、営業利益1,060億円、経常利益1,090億円、親会社株主に帰属する当期純利益710億円を見込んでいます。2020年度比では増収・増益となりますが、中計の掲げている売上高8,900億円、営業利益1,100億円は数値目標からは未達となっています。最後まであきらめることなく、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応して、収益確保に努めていきたいと考えています。

業績推移と2021年度中期経営計画目標

2019年度
(実績)
2020年度
(実績)
2021年度
(予想)
8月3日発表
2021年度
(中計目標)
売上高7,861億円7,329億円8,200億円8,900億円
営業利益817億円878億円1,060億円1,100億円
営業利益率10.4%12.0%12.9%10%以上
ROE10.0%10.7%-10%以上
  • 売上高は為替、ナフサ価格(フォーミュラ製品)等の前提やコモディティ製品の市況変動等で大きく増減。

中長期視点での成長戦略

SDGsを指針に持続可能な社会に貢献する製品の創出を推進

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企業が持続的な成長を目指していくにあたって、国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」は重要な指針になると考えています。当社グループでは、SDGsの考え方が表明されるずっと以前から「社会に役立つ製品づくり」を経営の根本に据えて事業を展開してきました。当社グループの生み出す多種多様な製品は、社会インフラや耐久消費財をはじめ人々の生活に役立つさまざまな最終製品に使われています。その意味では当社グループの事業そのものが、持続可能な社会の実現に貢献していると自負しています。

ただし中長期的な視点で考えた場合、社会からの要請は時代とともに変化していくものであり、それに応えていくには私たち自身も常に変化を続け、社会から真に求められる価値を創出していかねばならないと認識しています。こうした考えから、当社グループでは「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」「電子材料」を育成していくべき重点3分野と定め、次の成長を牽引する新たな高付加価値製品の創出を目指しています。

各分野ではSDGsを研究開発テーマに取り入れながら、AI(人工知能)やMI(マテリアルズ・インフォマティクス)などのデジタル技術も積極的に活用して研究開発プロセスを効率化するとともに、大学との産学共同研究や外部研究機関などとのオープンイノベーションにも積極的に取り組んでいます。

これらの成果として、2020年度は当社グループの専用装置を使って新型コロナウイルスを検出できる試薬や、同ウイルスに対する抗体を検出できる試薬を上市したほか、社会的な関心が高いプラスチックの資源循環についても、多層フイルムの分解と再利用に関する技術開発を進展させることができました。今後も外部とのオープンな連携をさらに広げ、SDGsの達成に貢献できるような次世代製品や新技術の開発を加速していきます。

「安全」を最優先に経営基盤の強化に努める

企業の持続的成長にとっては各事業の成長戦略や研究開発の推進と同時に、安全・品質・人材育成・財務など、事業活動の根底を支える基盤を強化していくことも不可欠です。なかでもプラントの安全操業は、化学メーカーとして果たすべき最大の社会的責務であると認識しています。

当社グループでは「安全はすべてに優先する」との基本方針の下、過去数年間にわたって健全化工事に対する投資を継続的に実施し、予防保全に努めてきました。これによってプロセス起因での異常現象は着実に減少しています。

製造業にとって安全の追求は、ある意味で終わりのない「永遠の戦い」です。これからもAIやIoTを活用した運転支援システムなど先端技術も積極的に活用しながらトラブルの未然防止に努め、「世界一安全な化学メーカー」として、地域社会の皆さまからも信頼される企業を目指していきます。

環境面では「CO₂削減」が最重要課題

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経営基盤の強化ではESG(環境・社会・ガバナンス)と呼ばれるような非財務面の活動にも注力していく必要があります。このうち化学メーカーとして当社グループがとりわけ重視しているのが「環境」の側面です。当社グループは「環境・エネルギー」を重点分野のひとつと位置付け、環境負荷の低減に役立つさまざまな製品や技術の開発・提供に努めていますが、同時に自社の事業活動に伴う環境負荷を抑制・低減することも企業の重要な責務であると理解しており、数十年前から公害対策や廃棄物の削減、省エネルギー化などに継続的に取り組んできました。

現在、当社グループが環境面での最重要課題と位置付けているのはCO₂削減です。気候変動問題の深刻化を背景に「脱炭素」は全世界の合い言葉となりつつあり、2020年は日本政府も「カーボンニュートラル宣言」を発表しました。そうしたなかで私たち化学メーカーにもこれまで以上に徹底したCO₂削減の取り組みが求められています。当社は2019年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、現在はそのフレームワークに沿ったシナリオ分析による評価を進める一方で、事業活動から排出されるCO₂の削減に向けた技術開発にも取り組んでいます。その重大テーマが火力自家発電におけるCO₂削減です。

化学製品はその製造過程で大量の電力を必要とするため、当社グループでは南陽および四日市事業所に火力自家発電設備を持って電力を確保しています。この火力自家発電設備は生産面での競争力の源泉である一方で、設備稼働に伴ってCO₂が排出されるため、これをいかに抑制していくかが大きな課題になっています。既に社内に「CO₂削減・有効利用推進委員会」を設置していますが、今年新たに専任者からなる「CO₂削減・有効利用戦略室」を新設しました。生産プロセスの省エネルギー化やLNGへの燃料転換はもちろん、排出したCO₂を自社で分離回収・原料化して有効活用することも視野に入れて課題や具体的目標を定め、対応策を推進しています。

目標の達成までには厳しい道のりが続くと思いますが、石炭火力発電の排出CO₂を有効活用できる技術が開発できれば、全世界から注目される画期的なイノベーションになるはずです。これこそが他産業には真似のできない、“化学屋”としての本領発揮であると全社に呼びかけており、当社グループが培ってきたあらゆる知恵と技術を結集してイノベーション創出に挑戦していきます。

「社会」や「企業統治」にも引き続き注力

ESGのS、社会の側面でも人権の尊重をはじめ人材育成、ダイバーシティの推進、働きやすい職場づくりなど多岐にわたる取り組みを展開しています。当社グループは「世界人権宣言」や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの趣旨に賛同しており、2019年4月には「国連グローバル・コンパクト」に署名して「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野における10原則を踏まえた活動を進めています。

未来の持続的な成長を支える人材の確保と育成にも力を入れており、すべての従業員が持てる能力を存分に発揮し、モチベーションを高く保ちながら成長していける職場環境の整備を進めるとともに、コロナ禍で加速したテレワークをはじめワークライフバランスと生産性の向上を目指す働き方改革にも取り組んでいます。まだまだ課題は多くありますが、社外の評価も徐々に高まっており、2020年度は経済産業省における「健康経営優良法人2021」(大規模法人部門)にも認定されました。

さらにガバナンス、企業統治についても重要課題のひとつと位置づけ、強化に努めています。2019年に設置した「指名・報酬諮問委員会」に続いて、2020年は経営の透明性確保とともに、取締役会がさらに適時・適切なチェック機能と監視機能を発揮できるよう社外取締役を2人から女性1人を含む4人へと増員しました。これによって取締役会全体に占める社外取締役の割合は44%にまで高まっています。また監査役会についても2021年は3人の社外監査役を選任し、うち1人を常勤監査役とすることで、取締役の職務執行に対する監督機能のさらなる強化を図っています。

コンプライアンスに関しても事業活動を行うすべての国での法令遵守はもちろん、内部統制システム運用の徹底やコンプライアンス相談窓口の設置、コンプライアンス教育の強化拡充などを通して社会から信頼を得られる健全な企業グループを目指しています。

国連グローバル・コンパクトの10原則

WE SUPPORT UN GLOBAL COMPACT

人権
原則1:人権擁護の支持と尊重
原則2:人権侵害への非加担
労働
原則3:結社の自由と団体交渉権の承認
原則4:強制労働の排除
原則5:児童労働の実効的な廃止
原則6:雇用と職業の差別撤廃
環境
原則7:環境問題の予防的アプローチ
原則8:環境に対する責任のイニシアティブ
原則9:環境にやさしい技術の開発と普及
腐敗防止
原則10:強要や贈収賄を含む
あらゆる形態の腐敗防止の取組み

ステークホルダーへのメッセージ

「東ソースピリット」を胸に持続的な企業価値向上を

最初にも述べましたが、企業は自らのサステナビリティをまず確かなものにしなければ、社会のサステナビリティに貢献していくことはできないと私は考えています。

実際、30年ほど前にバブル経済が崩壊した時、当社は大変な苦境に陥り、多大な痛みを伴う大規模リストラクチャリングを断行するとともに、進出を企図していた多くの事業領域からの撤退を余儀なくされました。その厳しい状況からなんとか這い上がり、新たな柱を構築すべく種を蒔いて、芽吹かせ、10年、20年という長い時間をかけて育ててきたのが、いまや営業利益の約5割を占めるまでになったスペシャリティ分野の製品群なのです。

その過程ではリーマンショックをはじめ、困難な時期もありましたが、当社グループが意図した事業ポートフォリオの組み替えは順調に推移し、この数年間はようやく財務基盤も安定して、将来の成長に向けた大規模投資も可能な状況になっています。

もちろん今回のコロナ禍のように、今後も予測できない危機が訪れる可能性はあります。そのような危機を従業員一丸となって乗り越え、持続可能な未来を自らの手で切り拓いていくための指針が、「東ソースピリット」に示した5つの価値観です。過酷な時代の体験から得た教訓と、常に危機意識を持ち続けることの重要性、そして希望を失わず挑戦し続ける熱い心を、今後も若い世代にも受け継いでもらいたいと思っています。

これからも私たち東ソーグループは、役員・従業員の全員が緊張感と当事者意識を持ち、一丸となって企業価値の向上を目指していきます。ステークホルダーの皆さまには、引き続き温かいご理解とご支援をお願い申し上げます。

代表取締役社長 社長執行役員
山本 寿宣