導電性高分子材料の可溶化と高導電化への挑戦

導電性高分子材料の可溶化と高導電化への挑戦

電気を流せるプラスチック(導電性高分子)の課題

かつて、電気は流れないと考えられていたプラスチック(高分子)に電気が流れることを発見したのは白川英樹氏。2000年にノーベル化学賞を受賞しました。それは「導電性高分子」と呼ばれ、現在、PCやスマートフォンなどの電子デバイスに不可欠な固体電解コンデンサや、静電気やほこりから電子製品を保護する帯電防止フィルムなど、多くの製品に利用されています。しかし、導電性高分子は一般的に「不溶性」で溶媒に溶解させるとコロイド分散(微粒子となって分散)します。そのため薄膜加工の限度や、長期保存時の沈殿という課題があり、これらを解決すべく東ソーは高い導電性と水溶性に優れる導電性高分子の開発に着手しました。

水溶性と高導電性の両立

着目したのは、自己ドープ型導電性高分子(導電性発現に必要なドーパントを分子内に有するπ共役高分子)。この高分子は、分子内に水溶性の官能基を有しているため、水溶性はクリアするものの導電性が低く、これまでは不向きとされてきました。

自己ドープ型導電性高分子

しかし東ソーは、有機材料研究所の強みである「有機合成技術」を駆使し、モノマー(高分子の原料)構造の設計から重合条件の最適化を進め、ついに水に溶解する高い導電性を持つオリジナルの導電性高分子「SELFTRON®」の開発に成功しました。SELFTRON(セルフトロン)は自己ドープ型導電性高分子としては世界トップレベルの高い電気伝導度を示し、また可溶性になったことで凝集沈殿等の保存安定性に関わる問題も解決することができました。

SELFTRONとは

水溶性タイプで世界トップレベルの導電性を有する自己ドープ型導電性高分子

東ソーオリジナルの導電性材料
水溶性✖高導線性
・水への完全溶解を実現
ドーパント添加不要
・製品形態:水溶液

導電性高分子材料の可溶化と高導電化への挑戦
SELFTRON S
(標準グレード)
SELFTRON H
(高導線グレード)
固形分 2.0wt% 1.2wt%
導電率 300S/cm 600~800S/cm
粘度 50mPa・s 50mPa・s

SELFTRON塗工フィルムの応用例

SELFTRON塗工フィルムの応用例

フレキシブル✖高導線性により幅広い用途へ展開

フィルムヒーター

SELFTRONの高導電性にを活かし短期間で昇温可能なヒーターを作製

フィルムヒーター

フィルムスピーカー

フィルムスピーカー

透明✖薄膜軽量化を可能にするフィルムスピーカーの電極部に使用

有機溶剤可溶型SELFTRONの開発

市場評価を進めていく中で、有機溶剤に可溶な導電性高分子のニーズがあることがわかってきました。そこで東ソーはSELFTRONをベースに改良を進め、有機溶剤に可溶なSELFTRON Aを開発しました。SELFTRON Aは、様々な有機溶剤に溶解し、高い導電性をもつ自己ドープ型導電性高分子であり、ディスプレイなどの表面ハードコート材や、太陽電池への応用が期待されています。

SELFTRON Aとは

有機溶剤への溶解性と高導電性を両立

東ソーオリジナルの導電性材料
有機溶剤への溶解を実現
・製品形態:有機溶液

有機溶剤への溶解性
  SELFTRON A
固形分 1.0wt%
導電率 100~300S/cm
有機溶剤 アルコール EtOH、IPA、1-BuOH
ケトン MEK、MIBK
グリコールエーテル PGME
  • 用途に合わせた溶媒選択が可能です。

ニーズに合わせた様々なカスタマイズが可能

ニーズに合わせた様々なカスタマイズが可能

SELFTRONはポリマーと溶剤から構成されているため、目的・用途に応じて、添加剤を配合してカスタマイズ可能です。当社でも各種配合グレードを開発しています。また銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブに代表される無機フィラーと複合化するなど新しい取り組みも始めています。

存在感のある有機エレクトロニクス材料へ

可溶性の「SELFTRON」の特長は、塗布、含浸、印刷などの加工によって、様々な素材に電気を流すことができることです。有機エレクトロニクス分野では、次世代コンデンサやフラットパネルディスプレイ、有機太陽電池などで応用が進んでいます。このような可溶性の導電性高分子は、プリンテッドからストレッチャブル、そしてウェアラブルなど次世代有機エレクトロニクスを支えるキーマテリアルとして期待されています。もちろん要求されるレベルも高くなりますが、東ソーはSELFTRONのさらなる高性能化を目指し挑戦を続けていきます。

SELFTRONでできること

関連リンク

研究・技術報告

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