TCFD提言に基づく情報開示
ガバナンス
当社の気候変動問題への対応は、マテリアリティに設定し、取締役会の承認を得て実行しています。具体的な施策はCO2削減・有効利用推進委員会を中心に推進しています。また、気候変動に関連する社会動向、規制要件やリスク管理などの情報収集およびグループ会社を含む社内への情報共有を進めています。活動に関する事項は適宜、取締役会に付議・報告し、監督・承認を受けるとともに、必要に応じて指示を受けています。
推進体制図
CO2削減・有効利用推進体制
CO2削減・有効利用推進委員会は、社長執行役員を委員長とし、自家火力発電所の稼働にともなって排出されるエネルギー起源CO2の削減および有効利用を積極的に推進するため、燃料転換を含む排出削減、回収や原料化による有効利用に関する課題整理、方針策定、調査・解析および進捗管理などを実施しています。
また、CO2削減・有効利用を推進すべくCO2削減・有効利用戦略室、CO2削減・有効利用南陽および四日市タスクフォースチーム中心に検討を進めております。
- CO2削減・有効利用戦略室:本社で全社の戦略立案、政府動向などの情報収集、南陽/四日市タスクフォースチームとの調整、グループ会社のGHG排出量削減計画推進のフォローなどを行う。
- CO2削減・有効利用 南陽/ 四日市タスクフォースチーム:南陽/ 四日市事業所で具体的対策を実行する。
2025年度の審議(報告)内容
- 2025年度の活動報告(発電所燃料転換、GI基金事業、ISCC PLUS認証取得、GXETS、再エネ等証書、非財務情報開示状況、CFP開示状況ほか)
- GHG削減計画の見直しに関する審議
戦略
シナリオ分析
シナリオ分析とは、気候変動問題やそれに対応するための長期的な政策動向などが経営環境をどのように変化させるかを予想し、そのような変化が自社の経営戦略にどのような影響を与えるかを検討することです。当社グループは、シナリオ分析を行うことで、気候変動問題に関するリスクと機会による影響を把握し、中長期の経営計画に反映させることで、サステナブルな社会の実現に向け、社会課題の解決に貢献する製品・技術・サービスの提供を一層進める戦略を策定しています。
当社グループの2025年度セクター別売上高およびGHG排出量は次ページの図のようになります。
当社グループ全体としての重要課題は、GHG排出量の削減であり、エネルギー多消費型の製品・技術の分析が中心となります。これまでに4つのセクター(石油化学、クロル・アルカリ、機能商品、エンジニアリング・その他)のなかから、クロル・アルカリセクター、石油化学セクターおよび機能商品セクターに関するシナリオ分析を実施しました。2026年度はこれまでの分析結果を更新し、新たなリスク・機会を調査・分析して反映しました。
2025年度セクター別売上高およびGHG排出量
東ソーグループ全体の評価
現状の当社グループのGHG排出量は化学業界のなかでも高いレベルにあり、GHG排出量削減が極めて重要な課題となります。GHG排出量の約80%を占める自家火力発電所での燃料転換、再生可能エネルギー調達などが重要な取り組みとなり、すでに具体的な対応を開始しています。事業機会は、コモディティ、スペシャリティとも幅広い事業領域にわたって可能性が見出されました。気候変動問題への対応をチャンスと捉え、幅広い視点で将来を見据えた技術・製品開発に注力していきます。
クロル・アルカリセクター、石油化学セクター、機能商品セクターの評価
クロル・アルカリセクターは、化学品事業(苛性ソーダ、VCM、PVC、塩素誘導体ほか)、ウレタン事業(MDI、機能性ウレタンほか)、セメント事業からなります。塩水の電気分解により製造される苛性ソーダ・塩素を活用した事業であり、化石燃料(石炭・石油コークスほか)を用いた自家火力発電由来の電力を多量に消費しているため、GHG排出量の多いセクターとなっています。
このため、エネルギーコストの上昇の影響をもっとも大きく受ける本セクターの重要課題も、東ソーグループ全体と同様に自家火力発電所の燃料転換となります。エネルギーコストの上昇幅を抑えながら製品製造時のCO2排出原単位を低減し、低炭素・脱炭素価値を製品価格に転嫁する仕組みづくりが重要と考えています。
また、本セクターの製品は基礎素材が多くを占めるため、その用途が多岐にわたり、気候変動問題の影響がリスク・機会となる用途が並立していることから、現段階ではリスク・機会の一方に偏った分析結果とはなりませんでした。長期的にも底堅い需要があり、当社グループの基盤を支える重要な事業の一つと位置付けられます。
石油化学セクターは、オレフィン事業(エチレン、プロピレンなど)、ポリマー事業(ポリエチレン、樹脂加工品、機能性ポリマーなど)からなります。四日市事業所にあるナフサクラッカーを核に事業展開しており、ナフサクラッカーにおける副生ガス(事業活動中に発生する石油系炭化水素ガス)の燃料利用によるCO2排出が多いことが課題ですが、水素・アンモニアへの転換や副生ガスの有効利用についても検討を進めています。また、バイオナフサなどバイオ原料を活用した製品ニーズに対応することの準備も進めています。
本セクターの製品もクロル・アルカリセクターと同様に基礎素材が多くを占めるため、その用途が多岐にわたり、例えば電気自動車(EV)市場拡大にともないガソリン車部材の売上減少が懸念される一方、EV部材の売上増加が期待されるなど、気候変動問題の影響がリスク・機会となる用途が並立する傾向となりました。
機能商品セクターはバイオサイエンス事業(計測・診断商品など)、有機化成品事業(無機・有機ファイン製品など)、高機能材料事業(電子材料・機能材料など)からなり、売上高に対するGHG排出量が比較的小さいセクターです。他セクターと同様にエネルギーコスト上昇など気候変動問題の影響によるリスクがあるものの、EVやデジタル市場、CO2回収関連製品など成長分野での収益拡大が見込まれ、他セクターよりも機会に対する期待が大きい結果となりました。
シナリオ分析の進め方
シナリオ分析は、「シナリオ分析の進行」に従って進めています。「シナリオ分析の前提」に示した2つのシナリオを基に、2030年と2050年の時間軸における移行リスク・物理的リスク、気候変動問題に関連する事業機会について、多方面から可能性がある項目のリストを作成、定性分析を実施しながら絞り込みを行い、定量分析するべき項目を特定しています。
また、東ソー本体とグループ会社だけではなく、サプライチェーン全体(「原料・資材(調達)」「加工・製造」「物流」「販売」「消費」「廃棄・リサイクル」)を考慮して、当社グループへの影響分析を実施しました。
シナリオ分析の進行
| 各ステップの概要 | 具体的な分析条件・実施内容 | |
|---|---|---|
| ステップ1 気候関連リスクの 重要性評価 |
気候変動に関連する当社事業へのリスクと機会の選定(定性分析) |
|
| ステップ2 シナリオの特定と定義 |
気候変動に関連する当社事業変化の影響検討(シナリオ分析) |
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| ステップ3 事業への影響評価 |
定義されたシナリオごとの将来の事業予測と財務インパクト試算(定量分析) |
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| ステップ4 潜在的な対応策の特定 |
特定されたリスクと機会への対応策、管理指標の設定 |
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| ステップ5 開示(社内外) |
関連当事者への理解の醸成とステークホルダーへの開示 |
|
シナリオ分析の前提
| 各シナリオの内容 | |
|---|---|
| +1.5℃シナリオ |
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| +4℃シナリオ |
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※1 国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)作成のWEO(World Energy Outlook)2021に掲載されたシナリオの一つ。2100年の気温上昇を+1.5℃に抑えるために、2050年に世界ネットゼロを達成するためのシナリオ。
※2 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の第6次評価報告書に掲載されたシナリオの一つ。SSPはShared Socioeconomic Pathway、共通社会経済経路の略でSSP5-8.5は地域対立的な発展のもと、気候政策を導入せず、2100年に+4.4℃(可能性の高い範囲:3.3-5.7)まで気温が上昇するシナリオ。
サプライチェーンを通した分析
シナリオ分析の概要
移行/物理的リスク
| リスク要素 | 財務影響要素 | 定性評価 ※赤枠…当社事業に 及ぼす影響が大きい項目 |
関連性が高い セクター |
求められる対応(◆:実行中) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ク ロ ア リ |
石 油 化 学 |
機 能 商 品 |
|||||
| 1.5℃(2050年カーボンニュートラル(CN))シナリオ | |||||||
| GHG排出規制 の強化 |
カーボンプライシングの上昇などにともない、化石燃料由来のコスト増加 |
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◯ | ◯ | ◯ |
|
|
| 再生可能エネルギー使用比率の増加にともない、エネルギーコスト増加 |
|
◯ | ◯ | ||||
| 脱炭素技術への移行 | 自家火力発電所の燃料転換にともない、設備投資・燃料コスト増加 |
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◯ | ◯ | ◯ | ||
| 原材料コストの変化 | バイオ原料の需要の高まりにともない、原材料コスト増加 |
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◯ | ◯ | ◯ |
|
|
| カーボンプライシングの上昇などにともない、原燃料コスト増加 |
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◯ | ◯ | ◯ | |||
| 消費者行動の変化 | 低炭素製品の認識や循環型経済への移行にともない、GHG多排出製品の売上減少 |
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◯ | ◯ | ◯ |
|
|
| EVの市場拡大にともない、ガソリン車関連製品の売上減少 |
|
◯ |
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||||
| EVの市場拡大にともない、ディーゼル車関連製品の売上減少 |
|
◯ | |||||
| 4℃(現状維持)シナリオ | |||||||
| 異常気象の激甚化 | 想定以上の風水害にともない、洪水発生やサプライチェーン寸断による損失拡大 |
|
◯ | ◯ | ◯ |
|
|
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◯ | ◯ | ◯ | ||||
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◯ | ◯ | ◯ | ||||
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◯ | ||||||
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◯ | ||||||
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◯ | ◯ | ◯ | ||||
| 平均気温の上昇 | 気温上昇にともない、各種操業コスト増加 |
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◯ | ◯ | ◯ |
|
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リスク要素に対する財務インパクトの算定例
【定量評価①:カーボンプライシングの上昇】(2026年度評価項目)
財務影響要素
当社グループの2025年度GHG実績排出量(スコープ1+2)は771万トンであり、脱炭素への取り組みの遅れにより、炭素税見合いで操業コストが増加するリスクが想定されます。
算定条件
- 当社グループ各社の製造拠点の所在国別に2025年度のGHG排出量を集計し、それに下記炭素価格を乗じて算定。
- World Energy Outlook 2024および2025のNZEシナリオ炭素価格を使用(為替前提:1ドル=150円)。
[ドル/トン-CO2]
| 2030年 | 2050年 | 対象拠点 | |
|---|---|---|---|
| Advanced economies | 140 | 250 | 日本、アメリカ、韓国 |
| Emerging market | 90 | 200 | 中国、インドネシア、ギリシャ |
| Other | 25 | 180 | フィリピン、マレーシア、台湾 |
評価結果
為替の影響やベース年度の更新から、設備投資額および燃料コストを再算定しましたが、2022年度の算定結果から大きな変化は見られませんでした。
脱炭素化施策を講じず、2025年度からGHG排出量が変化しなかったと仮定した場合の炭素税負担額。
「2030年度:約1,600億円、2050年度:約2,800億円」
求められる対応
- 当社グループ全体のGHG排出量を2018年度比で2030年度30%削減し、さらには2050年CNを達成することで、影響額の低減を図ります。
- 社内炭素価格(6,000円/トン-CO2)を設備投資時の採算性評価に活用しています。CO2削減投資を推進し、能力増強などによりCO2が増加する投資についてはそのコストアップを考慮した事業性評価を行っています。
【定量評価②:自家火力発電所の燃料転換】(2025年度評価項目)
財務影響要素
南陽、および四日市事業所の自家火力発電所から排出されるGHGが当社グループの排出量の約80%を占めているため、CO2フリー燃料への燃料転換が重要課題となり、設備投資コストや燃料コストの大幅な増加リスクが想定されます。
算定条件
- GHG排出量を2018年度比で2030年度に30%削減し、2050年にCNを実現するモデルケースの燃料構成を前提に必要な設備投資額と燃料コストの増加を試算。
- 2030年度はバイオマス燃料混焼およびクラッカー副生ガスの有効利用などによりGHG削減
- 2050年はバイオマス、アンモニア、水素などのCO2フリー燃料のみでの発電を想定するが、現段階では設備投資額および燃料コストの試算は困難
- 比較基準(=1)として2020~2024年度の平均燃料コストを使用。
- 各種燃料コストは、自社購入価格の推定値を使用。
評価結果
2030年度のGHG排出量30%削減に向けた燃料転換による累積設備投資金額。
「~2030年度:約900~1,200億円」
2030年度のGHG排出量30%削減に向けた燃料転換による燃料コスト増加率。
「2030年度:現状+20%」
燃料コスト試算
求められる対応
- CNに向けて自家火力発電燃料の多様化(各種バイオマス、アンモニア、水素)および再生可能エネルギー電力の購入を検討しています。
- 設備投資への補助金や燃料への価格差補填など、政府補助の有効活用を図りつつ、操業コストへの影響をできるだけ抑えた燃料転換の手法を検討しています。
- 周南、および四日市のコンビナート各社との燃料調達などにおける連携により、発電所の効率的な脱炭素化を推進します。GHG排出量を削減して製造したグリーン商材に対し、その付加価値を価格転嫁するための仕組みづくりの議論を業界団体を通じて進めていきます。
TOPICS
2022年7月、南陽事業所の老朽化した石炭火力発電所をバイオマス発電所へ更新する投資を決定。2026年4月より本運転を開始。
(設備投資額:約400億円、GHG削減計画量:バイオマス専焼時約50万トン)
【定量評価③:異常気象激甚化による国内生産拠点の浸水・風害】
(1) 洪水・高潮による浸水(2023年度評価項目)
財務影響要素
4℃シナリオ(SSP5-8.5)において異常気象が激甚化し、南陽、および四日市の両生産拠点が高潮などの影響で浸水することにより、資産の毀損が発生し、稼働停止による売上機会損失が発生するリスクが想定されます。
算定条件
- 東ソー本体の製造拠点である南陽事業所(山口県周南市)、四日市事業所(三重県四日市市)において、AQUEDUCT※を用いた2030年、2050年の洪水と高潮による浸水深を民間気象会社によるシミュレーションにて算定。
- 100年に1度の確率で発生(=100年確率:単年での発生確率1%)する浸水深を算定。5つのシミュレーションモデルの最大値を引用。
- 大都市の河川などの防災計画の計画規模(対策の目標)は、100年~200年確率の規模で計画。
- 内閣府の防災経済コンソーシアムが作成した『自然災害が事業に与える影響の参考指標ツール(洪水害版)』に、以下のデータを入力することで、上記シミュレーションで算定した浸水深による財務インパクトを試算。
①業種(=製造業)、②従業員数(≒事業規模)、③地形(=平野部)
※ 世界資源研究所が提供する水リスク評価ツール
評価結果
2030年、2050年時点の各温暖化条件において100年に1度の確率で発生する洪水・高潮による浸水被害の最大の資産毀損金額(1回分)。
「2030年:約50億円/最大時、2050年:約90億円/最大時」
求められる対応
- 津波・高潮による浸水対策として、主要電源設備などを中心とした被害抑制対策を実施済みです。
- 地震・津波リスクの高い四日市事業所において、南海トラフ地震の想定津波による浸水深さ1.25mを前提とした工場の安全停止および早期稼働対策を実施済みです。
- 将来の気温上昇予測に基づいた洪水・高潮に関するシミュレーションを定期的に実施し、その結果に応じて安定稼働に必要な措置を検討します。
(2) 強風による風害(2024年度評価項目)
財務影響要素
4℃シナリオ(SSP5-8.5)において異常気象が激甚化し、南陽、および四日市の両生産拠点が台風などの影響で風害にあうことにより、資産の毀損が発生するリスクが想定されます。
算定条件
- 東ソー本体の製造拠点である南陽事業所(山口県周南市)、四日市事業所(三重県四日市市)を対象に、過去に発生した台風の平均風速(基準値)を超える風速の発生頻度および平均風速の増減率を民間気象会社によるシミュレーションにて算定。
- 2030年および2050年における発生頻度の増減率および平均風速の増減率を過去の資産毀損金額に乗じることで、上記シミュレーションで算定した風害による財務インパクトを試算。
- 基準値 南陽:平均風速25m/s(1991年、台風19号、資産毀損金額3億円)、四日市:平均風速24.1m/s(1998年、台風7号、資産毀損金額1億円)
評価結果
2030年、2050年時点の各温暖化条件における強風による風害の最大の資産毀損金額。
「2030年:約3億円/最大時、2050年:約3億円/最大時」
※ 分析の結果、2030年および2050年における基準値以上の台風の発生頻度は微減、台風の平均風速は微増であり試算毀損金額への影響は軽微であった。
求められる対応
- 強風による風害対策として、老朽化設備の保守・更新を計画的に実施しており、また主要電源設備などを中心とした被害抑制対策を実施済みです。
【定量評価④:異常気象激甚化による東ソーグループ会社生産拠点・顧客/原料サプライヤー生産拠点の浸水】(2024年度評価項目)
洪水・高潮による浸水
財務影響要素
- 4℃シナリオ(SSP5-8.5)において異常気象が激甚化し、当社グループ会社生産拠点および顧客/原料サプライヤー生産拠点が高潮などの影響で浸水することにより稼働停止し、バリューチェーンが寸断することによる売上機会損失が発生するリスクが想定されます。
算定条件
- 当社グループ会社の国内/海外生産拠点:19拠点、国内/海外の顧客/原料サプライヤー生産拠点:5拠点に対し、AQUEDUCT※を用いた水リスク評価(一次評価)を実施。
- 一次評価の結果、比較的リスクの高い当社グループ会社の海外生産拠点である東曹(広州)化工有限公司(所在国:中国、主要製品:塩化ビニル樹脂)、東ソーベトナムポリウレタン(所在国:ベトナム、主要製品:ジフェニルメタンジイソシアネート;MDI)および主要顧客の海外生産拠点1社において、AQUEDUCTを用いた2030年、2050年の洪水と高潮による浸水深を民間気象会社によるシミュレーションにて算定(二次評価)。
- 100年に1度の確率で発生(=100年確率:単年での発生確率1%)する浸水深を算定。5つのシミュレーションモデルの最大値を引用。
- 大都市の河川などの防災計画の計画規模(対策の目標)は、100年~200年確率の規模で計画。
- 内閣府の防災経済コンソーシアムが作成した『自然災害が事業に与える影響の参考指標ツール(洪水害版)』に、以下のデータを入力することで、上記シミュレーションで算定した浸水深による生産停止日数を試算。
①業種(=製造業)
※ 世界資源研究所が提供する水リスク評価ツール
評価結果
2030年、2050年時点の各温暖化条件において100年に1度の確率で発生する洪水・高潮による浸水被害の最大の売上減少金額(1回分)。
- 東曹(広州)化工有限公司(中国)、東ソーベトナムポリウレタン(ベトナム)…「売上への大きな影響なし」
- 主要顧客の海外生産拠点…「2030年/2050年:それぞれ数十億円規模/最大時」
求められる対応
- 東曹(広州)化工有限公司では、東ソーで生産した塩化ビニルモノマーを原料として塩化ビニル樹脂を製造しています。洪水・高潮による浸水被害が発生した場合、当社グループの各拠点で生産・販売バランスを調整することで、売上高の維持に努めます。
- 東ソーベトナムポリウレタンでは、2026年から粗MDIの蒸留分離設備を運転開始し、モノメリックMDIとポリメリックMDIを生産する予定です。洪水・高潮による浸水被害が発生した場合、当社グループの他生産拠点にて減産分を補うことで、安定的な販売継続に努めます。
- 主要顧客の生産拠点に関して、将来の気温上昇予測に基づいた洪水・高潮に関するシミュレーションを実施し、その結果に応じて販売先の多角化など当社グループの安定稼働に必要な措置を検討します。
気候変動問題に関連する事業機会
| 機会要素 | 財務影響要素 | 定性評価 ※赤枠…当社事業に 及ぼす影響が大きい項目 |
関連性が高い セクター |
求められる対応(◆:実行中) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ク ロ ア リ |
石 油 化 学 |
機 能 商 品 |
|||||
| 1.5℃(2050年カーボンニュートラル(CN))シナリオ | |||||||
| 貢献製品・ 技術の 需要増加 |
循環型経済への移行にともない、リサイクル関連技術の事業機会拡大 |
|
◯ |
|
|||
| CCUS需要拡大にともない、CO2回収・有効利用技術の事業機会拡大 |
|
◯ |
|
||||
| CCUS需要拡大にともない、CO2を原料とした製品の需要拡大 |
|
◯ |
|
||||
| EV・半導体の市場拡大にともない、関連製品の売上増加 |
|
◯ | ◯ |
|
|||
|
◯ | ||||||
|
◯ | ||||||
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◯ | ◯ | ◯ | ||||
| 電解技術の需要拡大にともない、関連製品の売上増加 |
|
◯ |
|
||||
|
◯ | ||||||
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◯ | ||||||
| 省エネ建築(ZEB, ZEH)の普及にともない、関連建築素材の需要拡大 |
|
◯ | ◯ |
|
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| 脱炭素化に貢献する製品・技術に対する需要の拡大にともない、関連製品の需要拡大 |
|
◯ | ◯ | ◯ |
|
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| 4℃(現状維持)シナリオ | |||||||
| 異常気象 の激甚化 |
異常気象の激甚化にともない、 インフラ関連製品の需要拡大 |
|
◯ |
|
|||
| 感染症の拡大にともない、関連製品の需要拡大 |
|
◯ |
|
||||
【参考】東ソーグループの製品による環境貢献
2050年のカーボンニュートラルの目標に対して、東ソーグループの製品(塩ビ樹脂、ウレタン樹脂、EVA、アミン、ジルコニア粉末、合成ゴム)はGHG削減に貢献しています。建築物(住宅)の断熱や屋根などに設置する太陽電池によるGHG削減は、長期にわたる効果から重要な役割を担っています。また一部の製品は低炭素原料(バイオ原料)を使用することで、石油資源の削減や高性能化を実現しています。
リスク管理
当社の全社ガバナンス体制は、以下のようになります。
全社委員会の概要については、「ガバナンス」(コーポレートガバナンス)を参照ください。
気候変動問題がおよぼす可能性のあるリスクは、社会動向や日本政府の協議・議論の状況などの情報を活用し、所管部門ごとに評価しています。GHG排出量削減や有効利用に関する総合的なリスク管理は、CO2削減・有効利用推進委員会が担当しています。事業運営に関わるリスクを管理する各部門は、部門に関わるリスクの特定と起こりうる可能性がある財務的影響を評価し、社長に報告しています。日常の各事業活動におけるリスク管理は担当取締役の下で自律的に運営し、必要に応じて取締役会に諮り付議・報告し、監督・承認を受けています。また、設備投資計画の策定の際に内部炭素価格を採用しており、採算だけでなく環境影響度も含めて検討しています。気候関連のリスクはマテリアリティにも挙げており、その進捗状況はサステナビリティ推進委員会から取締役会に報告し、PDCA管理をしています。
CO2削減・有効利用推進委員会では、CO2の排出削減および化学品原料としての有効活用に関わる戦略立案、課題整理、方針策定、調査・解析および進捗管理などを推進しています。
リスクと機会の評価を通して、2050年カーボンニュートラルに挑戦するためのロードマップも策定しています。
リスクとして、当社は化学製品の生産に必要な電力を安価かつ安定的に確保するため、高効率のコージェネレーション※自家火力発電所を有しています。今後、炭素税や排出権取引制度が導入されると、新たな費用負担が発生します。全社的な炭素税の影響については、戦略のなかで定量評価しています(「戦略」参照)。このリスクは、製品ごとの競争力につながります。製品ごとのGHG排出原単位(CFP)、およびその製品を生産するプラントごとのGHG排出量を算定し、製品利益への将来的な影響を算定し、必要な対策を検討しています。例えばGHG排出量当たりの経常利益が10百万円/kt-CO2の製品は、炭素税またはユーザーからの削減要請のためにクレジットを購入した場合、炭素価格100ドル/トン-CO2(150円/ドル)が適用されると、15百万円の費用負担となり実質的な利益がなくなることが試算されます。
機会の獲得として、既存製品の環境貢献評価の検討を開始しており、環境負荷低減製品・サービスの市場拡大に対応し拡販を図っていきます。「環境負荷の低減」と「QOLの向上」といった社会課題の解決に貢献する当社グループの製品・技術・サービスを「社会課題ソリューション」として自社で認定し、その開発や普及を促進しています。
研究開発では「ライフサイエンス」「電子材料」「環境・エネルギー」を重点分野に設定し、気候変動問題に関連する市場ニーズや社会課題に応える製品・サービスの創出を進めています。
※ 発電の際に生じる熱を回収して利用するシステム。
指標と目標
GHG排出量目標
気候変動は世界でもっとも関心が高い社会課題の一つです。2020年10月の日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言および2030年度のGHG排出量削減目標の再設定を受けて、当社においてもGHG排出量削減目標を見直し、当社グループ全体でのGHG排出量削減方針を2022年1月に策定しています。
現在も同方針のもと、日本のエネルギー政策などの動向をふまえながら、GHG排出量削減の取り組みを積極的に進めています。
東ソーグループのGHG排出量削減方針
- 2030年度までにGHG排出量(スコープ1+2)を2018年度比で30%削減
- 2050年カーボンニュートラルへの挑戦
なお、当社が所属する一般社団法人日本化学工業協会(日化協)は、2023年3月に2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度の目標を次の通り設定しました。
- 2030年度に32%削減(2013年度比)
当社の目標は、日化協の新規目標に沿うものであり、会員企業として業界目標の達成にも貢献していきます。
気候関連指標カテゴリ
| 1. GHG排出量(実績) | 2025年度排出量「GHG排出量・エネルギー使用量の実績」を参照 |
|---|---|
| 2. 移行リスク | 「リスク管理」参照 炭素価格など政策・法規制、再生可能エネルギー導入(燃料転換)など技術イノベーションの進捗、消費者志向に関わる市場・評判 |
| 3. 物理的リスク | 「リスク管理」参照 異常気象(洪水や高潮など)により操業停止や物流(調達・出荷)遅延 |
| 4. 気候関連の機会 | 「リスク管理」参照 環境負荷低減に貢献する製品・サービス、都市基盤構築に寄与する素材、製品の安定供給に備える事業所基盤構築 |
| 5. 資本配分 | 「戦略」参照 2030年度までに気候変動問題関連投資として1,200億円、2026年度までに600億円の投資(投資決定金額ベース)を計画 |
| 6. 内部炭素価格 | 当社は、GHG排出量の増減にかかる設備投資の影響を精査するため、内部炭素価格制度(6,000円/t-CO2)を適用しています。実際の投資判断においても適用し、脱炭素投資を促進しています。 |
| 7. 役員報酬 | 「ガバナンス」参照 |