
NEWS RELEASE
2025年06月23日
東ソー株式会社
広報・IR室
東ソーと東京科学大学(旧東京工業大学)は、新規強誘導体窒化物※1に関する共同研究成果として下記の論文を発表し、2025年4月22日付で国際学術誌「APL Materials」に掲載されました。
当社は、半導体製造にかかせない薄膜を形成する材料としてターゲット材を製造・開発しています。薄膜は、基板上に形成される非常に薄い膜で電子部品の機能や性能の実現に重要な役割を持っており、本研究では、窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)を合金化することで従来よりも高濃度なスカンジウム(Sc)を結晶に取り込んだ膜が作製可能なことを世界で初めて明らかにしました。この発見は、多種類の元素を混合することで元素の取り込み量が増加する“エントロピー効果※2”を窒化物材料に応用したことによるものです。半導体メモリに使用される窒化ガリウム、窒化アルミニウムにスカンジウムがより多く取り込まれることで、動作の低電圧化および劇的な低消費電力化の実現が可能となります。また、圧電性※3や電気光学効果※4の向上も確認され、今後は高周波ノイズフィルタや超低消費電力で動作する光コンピュータなど、次世代デバイスへの応用が期待されます。
当社は、本研究の成果を活かして今後もターゲット材料の開発を推進し、超低消費電力メモリや各種高性能デバイスの実用化を目指すとともに、持続可能な情報社会の発展に貢献していきます。
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近年新たに強誘電性が見出された物質であり、ノーベル賞を受賞した青色LEDで使用されている窒化ガリウム(GaN)や、スマートフォンの高周波ノイズフィルタで使用されている窒化アルミニウム(AlN)が代表的なものとして挙げられる。
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複数の元素を混合することで複合物が安定化しやすくなり、各元素の取り込み可能な量が増加する現象で、金属の合金の合成で知られているもの。
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電気的なエネルギーを機械的なエネルギーに変換する特性。
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外部の電場によって物質の屈折率に変化が生じる現象。
掲載情報
論文
タイトル | Impact of film composition on crystal structure and ferroelectricity in (Al1-x-yGaxScy)N ternary wurtzite thin films |
著者 | Reika Ota, Nana Sun, Kazuki Okamoto, Shinnosuke Yasuoka, Yoshihiro Ueoka, Daiki Shono, Masami Mesuda, Hiroshi Funakubo |
研究者プロフィール | 岡本 一輝(オカモト カズキ) 東京科学大学 物質理工学院 材料系 助教 舟窪 浩(フナクボ ヒロシ) 東京科学大学 物質理工学院 材料系 教授 召田 雅実(メスダ マサミ) 東ソー株式会社 研究本部 先端融合研究センター 先端材料研究所 主席研究員 |
掲載学術雑誌
関連情報
お問い合わせ先
研究に関すること | 東京科学大学 物質理工学院 材料系 教授 舟窪 浩 Email:funakubo.h.aa@m.titech.ac.jp TEL:045-924-5446 東ソー株式会社 研究本部 先端融合研究センター 先端材料研究所 主席研究員 召田 雅実 E-mail:masami-mesuda-uy@tosoh.co.jp |
報道取材申し込み先 | 東京科学大学 総務企画部 広報課 Email:media@adm.isct.ac.jp TEL:03-5734-2975 FAX:03-5734-3661 東ソー株式会社 広報・IR室 Email:tosoh@tosoh.co.jp TEL:03-6636-3712 |