基本的な考え方
東ソーは、「教育は経営が期待する人材を育成し、かつその過程において従業員の自己実現に寄与するものである」との教育理念のもと、豊かな人格と資質の向上、思考能力の開発、安全・安定運転に関する知識・技能の習得を目的に、教育・研修制度を体系的に整えています。2021年度に新たに策定した人材育成の基本方針をもとに、従業員の自律的な成長が会社の成長にもつながると考え、自ら考え行動できる自律型人材の育成を目指します。
人材育成の基本方針
体制・責任者
人事部長を責任者として、教育体系および基本方針の策定・実行を行っています。
教育研修会議は、人事部門長および専門性の高い教育の実施にあたる専門部署の部門長からなり、全社における教育内容の統括・推進・評価を行っています。また、各事業所が実施した教育内容を報告・協議し、その結果を踏まえ今後の教育内容に反映することでPDCAを回しています。
各事業所では、教育研修会議をもとに年1回の事業所教育研修委員会を実施し、事業所の教育研修の統括・推進・評価を行っています。各部門責任者および管理者は、自部門の教育計画の立案・実施、教育状況の把握・チェックを行い、個人の資質を向上するとともに持てる知識・技術を業務に活用するようにしています。
「自律型人材」を目指した教育体系
「自律型人材」とは、組織内外に限らず、いかなる環境下であっても、自ら仕事や役割を創り、周りを巻き込んで結果を出す人材、と定義しています。
人材育成基本方針に基づき、スキル付与に重点をおいた受動的な研修から、キャリア教育をベースにした能動的・持続的に学ぶ体系へと再構築しました。「基本教育(制度・法律等)」「自己啓発によるスキルの習得」「業務経験・機会による学び」「グローバル人材育成」の4つの項目を持続的に学ぶことで「自律型人材」を目指します。そのために必要な5つの要素を明確にし、それぞれの要素を段階的に身につけていく教育プログラムとしています。
東ソーの「自律型人材」に必要な5つの要素
必要な要素 | 意味合い |
---|---|
巻き込み、動かす力 | 「巻き込まれる」のではなく、自分とは異なる多様な価値観の人を認め、自ら働きかけて動かしていく |
自ら変わり続ける力 | 「既存の枠にはまる」のではなく、変えられるものに目を向けて変革の戦略を立て、前向きに行動を変えていく |
やりきる覚悟 | 困難にぶつかっても代替案を探し出し、未来を信じて諦めずに行動し続けることによって完遂する |
描き、創る力 | 「目の前の課題解決に向き合う」だけではなく、目的やあるべき状態を描いて課題を設定し解決していく |
探求心 | 何事にも広く興味を持ち、さまざまな物事をかけ合わせて新しいものを構築していく |
キャリア教育
VUCA時代※の今、環境変化に対応するためには、自身のありたい姿を描き、その実現に向けて学び・やり抜く意欲を持ち続けることが必要です。仕事に必要な能力開発を自分自身で考え、実行する従業員主体型のキャリア形成を進めることで、一人ひとりが高い付加価値を生み出し、東ソーの競争力の源泉につなげていきます。
階層別研修では、従業員の自主性や主体性を引き出すことを狙いとしたキャリア教育を導入しています。これまでの自身のキャリアの棚卸と将来ありたい姿を描く機会を設けた後、全受講者に対しキャリアコンサルタントによるキャリアカウンセリング受講の機会を提供しています。そこで、キャリアの目標を明確化し、仕事の目標意識を高め、仕事への満足度向上や個人の成長を促しています。2024年度には、総合職従業員のキャリアカウンセリング実施割合70%以上を目指し、取り組んでいます。
さらに、2022年度にキャリアサポートグループを新設し、全従業員を対象に国家資格キャリアコンサルタントの有資格者とのキャリア相談ができる環境を整えました。働き方や適性、置かれた状況などさまざまな人がいる中で、その人がその人らしく活躍できるように、理想のキャリアやライフスタイルを描くことをサポートしています。
また、幹部職は、自身の役割認識とキャリアについて考える必要があるだけでなく、部下や後輩のキャリア支援をすることも重要な役割となります。そのため、幹部職研修では、“部下・後輩のキャリア支援”という観点も含めた研修を行っています。
- Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもの。
教育体系図
- 若手キャリア研修以降の階層別研修後にはキャリアカウンセリングを受講可能とする。
2022年度総合職階層別研修実績(東ソー籍)
研修名 | 対象者 | 主な研修内容 | 1人あたりの 研修時間 (時間) | 受講者 (人) |
---|---|---|---|---|
新入社員 研修 | 新入社員 |
仕事のスタンスを固める
| 187.5 | 87人 (男性:61人、 女性:26人) |
フォローアップ 研修 | 入社 2年目 |
グループ討議を通じて、自らの振り返り・啓発の機会とする
| 12 | 111人 (男性:94人、 女性:17人) |
若手キャリア 研修 | 入社 3~4年目 |
キャリアの方向性を明確化する
| 7.5 | 117人 (男性:93人、 女性:24人) |
中堅キャリア 研修 | 入社 7年目相当 |
中長期のキャリアビジョンを策定する
| 15 | 70人 (男性:65人、 女性:5人) |
上級指導職 研修 | 上級指導職 昇格者 |
キャリアの棚卸および役割理解
| 12 | 40人 (男性:36人、 女性:4人) |
初任幹部職 研修 | 新任幹部職 昇格者 |
キャリアの棚卸および初任幹部職として期待される役割の理解
| 22.5 | 59人 (男性:58人、 女性:1人) |
上級幹部職 研修 | 上級幹部職 昇格者 |
上級幹部職としての自らの役割と責任の再確認
| 15 | 39人 (男性:39人、 女性:0人) |
教育研修投資額(東ソー単体)
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
投資額 | 30.1 | 38.1 | 55.7 |
自律的学びの支援
東ソーでは、業務上必要な基礎知識および一般教養・スキルの修得を目的として通信教育制度を整備し、従業員の自律的な学びを支援しています。自身の業務に関係なく受講することができ、修了者には受講料の50~80%相当を補助しています。
育児休業中に受講した場合は全額会社負担としており、休業中の自己啓発や職場復帰前の準備期間に活用されています。
通信教育の受講者数(東ソー籍)
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|
受講者 | 260 | 374 | 267 |
資格・技能検定の取得奨励
従業員が各種資格および免許を取得するための受験および受講を支援しています。
東ソーが指定する資格・免許を取得した従業員は、難易度によって5つの区分に分けた報奨金を給付しています。
製造・設備管理部門に所属する一般職には、技術力の底上げを目的として、各職分への昇格に必要な資格の取得を設定しています。
資格報奨金の給付件数(東ソー籍)
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
---|---|---|---|
給付件数 | 625 | 445 | 739 |
グローバル人材育成
東ソーグループの海外売上比率は50%を超え、事業・職種によらず、今後はより一層海外と関わる機会の増加が予想されます。そこで、2022年度にグローバル人材を「仕事を進める上で語学をツールとして活用し、東ソーの事業を海外にも拡げられる人材」と定義を明確にし、個人の語学レベルに合わせて段階的にレベルアップできる育成プログラムへと改めました。今後は、社内の語学力の底上げを図るとともに、海外トレーニー研修を通じて現地の商慣習を学び取るプログラムを拡充していきます。グローバルな知見を深め、さらなるグローバルビジネス展開力を習得できるプログラムへと発展させることで、グローバル人材の育成を強化していきます。
新卒・中途採用
東ソーの持続的な成長を実現するために、多様な価値観を持ちグローバルに活躍できる適正人員の確保に努めています。
新卒採用では、求める人物像を「探究者」×「開拓者」とし、物事に対して深く知ることに労力を惜しまず、多様な仲間と課題解決に向けて取り組むことができる人材の確保を目指しています。そのため、採用ホームページやパンフレットを通じて、東ソーの進むべき重点分野や技術動向、人的魅力に関して情報発信を行っています。また、業界研究セミナーや1day仕事体験などにより早期段階で学生と接点を持ち、企業理念や経営方針だけでなく、先輩従業員を通して東ソーの社風をアピールしています。2023年度は、総合職99人、一般職86人を採用しました。
中途採用では、研究・技術開発の重点分野を中心に、専門知識と経験を備えた即戦力人材の確保を目指しています。
従業員の適正配置への取り組み
組織全体の活性化を図るためには、従業員の適性や希望に合った配置を行う必要があります。そこで、適正配置に必要な従業員に関するさまざまな情報をデータとして取集・蓄積し、一元管理を行うタレントマネジメントシステムの構築を進めています。従業員の具体的な職務経歴や保有知識などをデータ管理し、人事部門・従業員・上司の間で共有することで、所属長による部下の背景把握による育成にも活用していきます。
また、従業員の意思を反映する異動の仕組みである社内公募制度の導入も予定しています。これらの施策を推し進めることで、これまで以上に従業員の能力を最大限に発揮できる適正配置を実現していきます。