PROFILE

1年目は製造部にてものづくりの現場を体験し、2年目からは無機材料研究所へ。新規製品の探索、製品構造制御因子の解明などの基礎検討、次世代製品の開発を行っている。

挑戦しているのは電気自動車向けの
二次電池用の正極材の原料開発。
“性能の高い製品をより低コストで”が目標です。

東ソーに入社した理由は?

化学業界全般を見渡しながら、特に大学での研究テーマだった多孔質材を扱っている化学メーカーに着目しました。東ソーに興味をもったきっかけは、幅広く多様な製品群を手掛けており、かつ研究開発熱も旺盛で、次々と新たな可能性を探求する、その姿勢に惹かれたから。また、説明会で感じた明るい社風と、お会いした先輩社員の方々から滲み出る人柄にも魅力を感じて、ここだ!という確信をもって、決めました。

所属グループの研究開発課題は?

私の研究グループでは、電気化学の技術をコアとして、幅広い研究開発テーマと向き合っています。世界トップレベルのシェアを持つ電解二酸化マンガンや、コモディティ分野の主力製品である苛性ソーダ製造の技術的サポートなど、さまざまな既存製品・製造プロセスの改良、用途展開によるシェア拡大へのチャレンジとコストダウン追求、そしてリチウムイオン二次電池をはじめとする蓄電デバイス用電極材料に関する研究開発などを行っています。

井手さんが挑んでいるテーマを教えてください。

次世代製品の開発で、従来のものより性能の高い製品を、より低コストでつくることを目標に、まず挑んだのは、電気自動車向け二次電池用の正極材の原料開発。従来以上に航続距離を延ばすのが目的で、次世代正極材料原料に適切な物質の合成・探索から検討を開始し、物質構造の最適化と合成原料の粒径を数ミクロン単位で小さくしていくアプローチにより、性能アップを目指しました。成果は出たもののコストメリットを極められず、あと一息のところで製品化がペンディングとなっています。

従来方法の延長か、新しい方法を探るのか、
さまざまな可能性を模索しながら
限界に挑戦しています。

製品化への壁は大きいですか?

ラボスケールからパイロットスケールへ、そして実プラントスケールへ。スケールアップの過程で、同じ製造条件でも同等の性能が出るとは限らないのが化学の難しいところです。二次電池用正極材原料の開発でも、パイロットスケールの段階で、壁にぶつかりました。製造条件を変えてトライ&エラーを繰り返し、最終的にはプロセス開発部門の方々の知恵も借りて乗り越えました。大切なのは、どんなイレギュラーな状況にも対応できるよう、日頃から物性と設定条件の相関関係を経験値として把握できるようになること。そうすれば最小限の試行錯誤の上で、最適な条件を導き出せるようになるはず。そのレベルに達するよう努力したいと思っています。

現在のチャレンジテーマは?

既存製品のグレードアップに挑んでいます。アルカリ乾電池を超えて、長持ちができる乾電池の材料開発を行なっています。コマーシャルでもおなじみの乾電池です。放電反応をアップさせる化合物を開発し、大幅な性能アップに貢献しています。ただ、次期バージョンに対するお客様の要望は高く、さらなる性能アップを求められており、引き続き研究開発を進めています。従来方法の延長でいくのか、全く新しい方法を探るのか、さまざまな可能性を模索しながら限界に挑戦しています。

次世代製品の開発も再開しているのですか?

はい。蓄電デバイス用電極材料に関して、今は新しいシステムへの適用を大学との共同研究ベースで調査中です。ハードルはかなり高いですが、先行することができれば大きなビジネスにつながるので、ぜひ挑みたいと思っています。

最短距離でゴールに辿り着くために、
理論的な裏づけや経験に基づいて
実験計画を立てられるように意識しています。

仕事の面白さや醍醐味は?

自分の扱っているものが将来的に世の中に出る…そんな可能性を常に感じながら仕事ができることが面白いです。研究開発プロセスも分業制ではなく、一つのテーマを一貫して独自のアプローチで追求できること、それが醍醐味ですね。また、さまざまなジャンルの研究開発者が身近にいて、気軽に意見を求めることができ、そこからブレークスルーのヒントをもらえること、これも東ソーで働くことの特徴であり、魅力かもしれません。

今、自分に足りないものは?

一つは自分の扱っているものの周辺も含めての幅広い知識やスキル。これについては文献・特許検索や学会聴講、社内の他のグループとの情報交換やディスカッションなどを通じて身につけていきたいです。そしてもう一つは、設定した目標に早く到達する能力。これについては最短距離でゴールに辿り着くために、理論的な裏づけや経験に基づいて実験計画を立てられるよう意識して取り組んでいます。

電気化学会など学会のプレゼンの場にも立ち、
自らの研究開発成果を世界にアピールする
きっかけを作りたい。

3年後の自分は、どうありたいと考えていますか?

今扱っている研究開発テーマの材料をユーザーに受け入れてもらい、世の中に出していたいですね。また、次世代製品の開発においても、学会のプレゼンの場にも立ち、自らの研究開発成果を世界にアピールするきっかけを作っていきたいと思っています。

最後に学生たちへのメッセージを。

東ソーの良さは、厚みのある経験に裏付けられた凄い知見を持つ先輩たちが沢山いること。私もそんな先輩方に教わりながら、日々スキルアップを果たしています。現在、特に意識しているのが「あたりをつけろ!出口を考えろ!」という上司の教え。競合他社を圧倒する成果をスピーディーに出すこと、それが私たちの存在価値そのものです。そういう意味で東ソーは研究開発者としての存在価値をどこまでも高めていける場所。向上心が高く、野心のある人にとっては最適な環境がここにはあると思います。