世界各国の経済成長によりますます深刻になる地球環境問題。
各国の期待に応え、地球の未来に貢献している東ソー独自の製品とは―。

※掲載内容は取材・撮影時のものです。

INTRODUCTION

排ガス規制、特にディーゼルエンジンに対するNOx規制が各国において強まる中で、その浄化の役割を担う触媒「ゼオライト」の高性能化の必要性が年々増している。これまでの規制は欧米を中心としてきたが、昨今は中国やインドの規制も欧米に倣い強化されてきている。中国においては新規ゼオライトメーカーが低価格を武器に一気に参入。そんな背景から、市場では今、熾烈なシェア争いが始まっている。

ANSWER

東ソーが導いたもの

東ソーでは高性能化への先進的取り組みはもちろん、中国・インドなどアジア市場を見据えた量産拠点をマレーシアに新設するとともに、販売網も強化。新規参入のゼオライトメーカーの追随を許さないビジネスフォーメーションを構築している。地球環境保護問題の解決へ。化学のプロフェッショナルとして立ち向かい、実績に裏付けられた信頼と先進の開発力で、今なおトップクラスのシェアを維持している。

PROFILE

鈴木 渉
高機能材料事業部 機能性無機材料部 ゼオライトビジネスユニット

START

中国の排ガス規制によって、
大きな市場が生まれる。

ゼオライトは本来、天然の鉱物ですが、その優れた物性を活かす合成ゼオライトが誕生してから、その利用分野が一気に拡大しました。ゼオライトには「吸着・分離」「触媒」「イオン交換」という3つの機能があり、現在最も伸びているのが、自動車の排ガス規制への活用です。排ガスの無公害化を果たす重要な役割を担っており、特にディーゼルエンジンの排ガス処理触媒の原料として世界中で使われています。

東ソーが提供する「HSZ®(ハイシリカゼオライト)」は高い耐熱性・耐酸性を有し、その上お客様のニーズに応じたカスタマイズも可能で、その提供グレードのバリエーションは無限大。欧米のディーゼルエンジン向け触媒原料として大きなシェアを維持しています。しかしながら、中国やインドでの排ガス規制強化による市場拡大の流れで、状況が変わってきているのも事実です。中国の大型商用車の販売台数は2020年には欧米並みになると予想され、新規ゼオライトメーカーが中国において一気に参入し、低価格を武器に攻勢をかけてきたのです。そんな背景から「高性能」と「低コスト」の両立というオフバランスの追求において、熾烈な競争をしなければならない状況が生まれています。

CHALLENGE

研究・製造・販売の連携で、
盤石のフォーメーションの構築へ。

東ソーのゼオライト事業における強み、それは研究・製造・販売の連携による顧客ニーズへの対応力。求められるグレードを、速やかに開発・製造してジャストインタイムで届ける、そのバリューチェーンにおけるクオリティが極めて高いのが特長です。そこにはコストだけでは測れない、信頼に基づく確たる評価があり、それが市場シェアの高さに結びついています。

しかしながら状況は刻々と変わります。競合他社の追随も脅威となってきています。たとえば今、特定ユーザー向けの開発品で、競合他社との採用競争に直面しています。性能面では同等評価ですが、コスト面に加えて新設備への投資による供給能力の面で競合がアグレッシブな動きをしており、その対応策を練っているところです。競合と同じような策では勝てません。競合の動きを凌駕する戦略的アクションが必要です。

そのような背景を見据えて、私たちは改めて研究・製造・販売の連携を強化。顧客ニーズの先の先を見越し、その次の世代の開発品を早期に紹介することによって、永続的に東ソーとの関係を保持するメリットをアピール。一品一品のグレードでの勝ち負けではないところ、信頼関係の大切さを強調しています。また、供給能力の面に加えてBCP対策も兼ねてマレーシアに製造拠点を新設。さらには現地法人や販売代理店との連携による販売網の強化も行い、盤石のビジネスフォーメーションを構築しています。

この案件でも、当初は相手の勢いにも押され、一時劣勢になりましたが、その後は一気に挽回。今回の厳しい競争で、ゼオライトビジネスユニット全員の意識が高まりました。つまり、臨戦態勢が整い、さらなる攻勢へのステップボードに立てたのです。守りから攻めへ。これからが本当の勝負のときだと思っています。

AND NEXT

向き合わなければならない
幾多の壁を乗り越えて。

営業がお客様と友好な関係を築いていても、良い材料がなければ売り込めません。逆に良い材料があってもお客様にタイムリーにアピールできる場を作らなければ、売上はあがりません。良い材料を量産して、ジャストインタイムで届けられるサプライチェーンがなければ、お客様の信頼は得られません。私たちはこのビジネスのセオリーを肝に銘じて、すべてにおいて他を圧倒するプロフェッショナルでありたいと考えています。そのためにはビジネスの最前線にいる私たち営業が、ゼオライト事業のプロデューサーとなり、世界で闘える環境を整えていかなければなりません。

地球環境保護問題と向き合い、それを解決するために化学の可能性と向き合い、お客様と向き合い、そして社内の研究や製造と向き合い、世界市場と向き合う。さらには為替動向を見据えて、シビアな損益管理とも向き合う。向き合わなければならない壁は多く、当然プレッシャーもありますが、「私たちが世界の自動車産業を支え、そして地球の未来を守っていく」という使命を考えれば、すべてを乗り越えられます。

東ソーのゼオライト事業はこれからも地球のために大きくならなければならないのです。化学のプロフェッショナルとしての社会貢献にゴールはありません。走り続けること、それが私たちにできる唯一の地球の未来への約束です。