特集1人材戦略

「自律型人材」を育て
未来の成長につなげていきます

取締役 常務執行役員
人事担当
桒田 守

特集1 人材戦略

不透明な時代環境のなかで、中長期的な成長を実現していくための鍵となるのは、未来の企業を担う人材の育成とそのための働きやすい職場環境づくりです。
東ソーは、自ら考え、行動できる自律型人材の育成のため、これまでの能力開発やスキル付与を主体とした教育体系を見直し、キャリア教育をベースにした持続的な学びの体系に再構築しました。人材戦略の現状と今後の取り組みについて、取締役 常務執行役員 人事担当の桒田に話を聞きました。

Q.企業の未来を支える「人材」の育成についてどのように考えていますか?
A.東ソーで長年培われてきた企業風土の「良さ」を活かし、「自ら考え、行動できる自律型人材」を育成していきたいと考えています。

東ソーでは2021年度、人材育成の基本方針(図1)を変更しました。新方針は「環境変化に対応するために自身のありたい姿を描き、その実現に向けて、学び・やり抜く意欲を持ち続けられる“自律型人材”を育成する」ことです。この「自律型人材」とは、「組織内外に限らず、いかなる環境下であっても、自ら仕事や役割を創り・周りを巻き込んで結果を出す人材」であると定義しています。

図1:人材育成の基本方針
図1:人材育成の基本方針

これは、全く新しい考え方を導入したということではなく、長年培われてきた企業風土の「良さ」を活かして、人材育成の基本方針としてより明確なものにした、ということであると私は捉えています。
もともと東ソーには、従業員の自主性・主体性を大切にする風土があります。上司と部下の関係も、良く言えば非常にフランクであり、すべてを上司が指示するのではなく、部下はかなり自由度高く仕事ができ、仮に失敗してもフォローする体制が整っています。私は技術系出身で、入社後30年ほど製造部門にいましたが、実体験としてもそのように感じています。
私が入社したのは1984年、30年以上も前ですが、入社時に聞いた当時の専務訓示は今でも印象に残っています。「会社に入れば、学校時代のテストのようなものはない。だから、これからは自分でハードルをつくり、自らそれを飛び越えていかねばならない。それをやるか、やらないかで君たちの将来は決まる」といった内容で、要は自主的に自分を鍛えていかないと成長はできない、ということです。その後、しばらくして「東ソースピリット」が制定されましたが、そのときも「挑戦する意欲」「冷たい状況認識」「持続する意志」といった言葉に、あの訓示と共通した考え方が表されていると感じました。
こうした自主性・主体性を重んじる考え方は、多様化・複雑化し、絶えず変化し続ける今の時代においては特に重要であると思います。事業環境がどんどん変化していくなかで、今の若手従業員のキャリアコースは昔と変化しており、今後は今まで存在しなかった新しい職種も多くなっていくと思います。仕事の中身もより広範に、ダイナミックになって「今、何をすべきか」を常に自分の頭で考え、行動しなければならない場面が増えていきます。人事部としては、事業環境の変化に自律性をもって対応していける人材を育てていくことが使命だと思います。

Q.人材戦略について具体的にどのような施策を進めていますか?
A.自律型人材に必要な「5つの要素」を伸ばす教育プログラムの実施や、従業員一人ひとりがいきいきと働ける職場環境の醸成に努めています。

まず教育については、基本方針である「自律型人材の育成」に向けて、2021年度に教育体系(図2)を見直しました。これまでの教育体系は能力開発とマネジメントスキルを軸としていましたが、キャリア教育をベースにした持続的な学びの体系に再構築しました。これは、東ソーの目指す「自律型人材」に必要な要素を「東ソースピリット」や経営層へのインタビューなどから「5つの要素」(表1:「巻き込み、動かす力」「自ら変わり続ける力」「やりきる覚悟」「描き、創る力」「探究心」)を抽出し、それぞれの要素をキャリア教育や人事部の提供する学習ツールによる自己研鑽などで段階的に身につけていこうというプログラムです。

図2:キャリア教育をベースとした教育体系
図2:キャリア教育をベースとした教育体系

今回の教育体系改定におけるポイントのひとつは、階層別教育のなかに「自分のキャリアを考える場」をつくったことです。これまで自分のやってきたことを振り返り、自分のスキル・能力を見極めながら、次のステップを考えていく「キャリアカウンセリング(CC)」をプログラムに追加しました。これは、研修後に全員がCCを受けられる体制を整備し、自身のキャリアについて相談できる場を設け、キャリアを支援する仕組みのことです。
人事部では、新しい価値を創出し続けるには、多様な人材や価値観を活かすことが不可欠であるという考えから、ダイバーシティの推進にも努めています。特に今後の課題と考えているのが「女性活躍の推進」です。採用面では女性の比率が年々着実に高まっており、2020年度はCSR重要課題のひとつである総合職採用者に占める女性の割合20%以上を達成しました。また採用後も、これまで女性従業員が少なかった製造・営業・交替勤務職場などへの配属を進め、活躍の場を広げるとともに、女性が長く働き続けられる職場環境の整備も進めています。2020年にはご家族の転勤などで会社を辞めた方も職場に復帰できる「カムバック制度」を新設しました。
このほか従業員がいきいきと働ける職場環境づくりの一環として、育児・介護などに関する各種休暇・休業制度や短時間勤務制度などの整備によるワークライフバランスの実現や「健康経営※1」の推進にも取り組んでいます。企業理念の実現に向け、その担い手である従業員がもてる力を最大限発揮できるように心身の健康の増進をサポートすることは重要です。そのため、病気などへの予防と健康づくりを目的に「体力づくり」「生活習慣の改善」「メンタルヘルス」を3本柱とするさまざまな健康づくり活動を実施しています。例年、ウォーキング活動や食育・禁煙・適正飲酒をテーマとしたイベント、産業医や外部講師によるメンタルヘルス講習会などを行っており、会社組織として従業員の健康意識の向上を図り、セルフケアを支援しています。こうした活動は社会にも認められ、2020年度は2年連続で経済産業省の「健康経営優良法人(大規模法人部門)」にも認定されました。

  1. NPO法人健康経営研究会の登録商標。
表1:東ソーの「自律型人材」に必要な5つの要素
必要な要素意味合い
巻き込み、動かす力「巻き込まれる」のではなく、自分とは異なる多様な価値観の人を認め、自ら働きかけて動かしていく
自ら変わり続ける力「既存の枠にはまる」のではなく、変えられるものに目を向けて変革の戦略を立て、前向きに行動を変えていく
やりきる覚悟困難にぶつかっても代替案を探し出し、未来を信じて諦めずに行動し続けることによって完遂する
描き、創る力「目の前の課題解決に向き合う」だけではなく、目的やあるべき状態を描いて課題を設定し解決していく
探究心何事にも広く興味を持ち、さまざまな物事をかけ合わせて新しいものを構築していく
Q.人事担当役員としての想いを聞かせてください。
A.失敗を恐れずにチャレンジができ、辛いときもお互いを支え合える職場風土をこれからもつくっていきます。

人材教育においてOJTも重要であると私は考えています。もちろんOJTだけでは足らない部分があり、階層別研修のような座学で補っていくことも必要です。しかし、人が一番成長するのは実際の仕事を通してではないかと私は思います。
このOJTの効果を発揮させるには、若手従業員が「自分でやってみる」チャンスを会社が積極的に与えることが重要です。先程も述べましたが、東ソーにはそういう企業風土があります。最初のうちは失敗することも多いので、結果に対して上司がしっかりとフォローしなければなりません。
しかし、人が成長していくには「失敗する」ことが非常に大切です。私の経験においてもそうですが、人は大小さまざまな失敗を繰り返して成長する、という思いが私にはあります。
別の言い方をすると、失敗したときにも上司や先輩や同僚がしっかりサポートしてくれるような職場環境が、人材の育成には大切だと思います。働きやすい職場環境というのは、いろいろな制度が整っていることも必要であり、清潔なオフィスやリモートワークの環境などハード面の整備も大切だと思います。しかし、一番大切なのは、仕事で辛いことがあってもお互いに支え合えるような職場の雰囲気ではないかと私は思います。今後も、上司と部下がフランクに向き合える東ソーの「良き企業文化」を受け継ぎながら、一人ひとりの自律性を高める人材育成を行っていくことで、将来「東ソーで働いて良かった」という人をひとりでも多く増やしていきたいと思っています。