トップメッセージ

当社を取り巻くビジネス環境

2016年度は、為替は円高に振れましたが、原油の値段が下落したことなどから交易条件が大きく改善した年となりました。 化学業界全体を見渡しても好決算の会社が増えており、当社もその例に漏れず、2016年度は過去最高益を計上し、当初予想も達成しました。

また、2016年度は、新たに策定した中期経営計画の初年度でもありましたが、1年目にしてさまざまな目標をクリアしました。しかし、当社は「コモディティ」と「スペシャリティ」というハイブリッド経営をしており、コモディティ分野は、グローバル規模で不透明な状況が続く外部要因に大きく左右されるため、決して安定しているわけではありません。中期経営計画の最終年度である2018年度末の時点で、すべての目標が達成できるか、それが大きなカギだと考えています。

現在の経営課題は「業績予想の達成」「安全対策」「成長戦略」「ガバナンス・コンプライアンス」「現場力の強化」の5つと考えております。これらの課題はCSRとも密接に結びついていますから、当社従業員の実践すべき心構えでもある『TOSOH SPIRIT』に示された5つの言葉を胸に、経営課題の達成に向け全社一丸となって取り組んでまいります。

TOSOH SPIRITに込められた想い

この『TOSOH SPIRIT』を策定したのは、バブル経済華やかなりし30 年前でした。ちょうどCI(コーポレート・アイデンティティ)活動が盛んに行われていた頃で、社名を「東洋曹達工業株式会社」から「東ソー株式会社」へ変更したことに合わせて策定しました。私は個人的に『TOSOH SPIRIT』で語られている言葉が好きで、30年という長い時を経た今でも、社風として根強く生きていると思っています。

「挑戦する意欲」は、高い目標に取り組む意欲をもとうというメッセージです。そのためには、自分が置かれている状況を客観的かつ冷静に認識することが大事で、それが2番目の「冷たい状況認識」につながっています。

「熱い対応」は、掲げた目標達成へのハードルがいかに高くても、途中で挫折してはいけないという想いが込められています。自ら決めた目標に熱い思いをもって絶え間なく挑戦していく、それが「熱い対応」であり、それに欠かせないのが「持続する意志」です。これは今で言う「サステナビリティ」そのものではないでしょうか。

5番目の「協力と感謝」が非常に大事で、従業員同士の協力とお互いへの感謝という意味もありますが、何より私たち東ソーという会社がさまざまなステークホルダーの協力があって初めて成り立つものですから、その協力に対する感謝の気持ちを忘れないで欲しいと思っています。

現代のCSRと親和性が高いTOSOH SPIRIT

30年前と言えば、日本において「CSR」という言葉はまったく使われていなかった時代です。企業の社会貢献というと、地元 への寄付、あるいは文化活動やスポーツへの協賛が行われていた程度で、産業界全体として利益が優先され、ほかのことを考える必要性にも迫られていませんでした。しかし社会と企業文化の成熟とともに、利益追求だけでは企業としてその存在が喜ばれることはなくなってきています。地域社会やお客さま、株主などのステークホルダー、あるいは地球環境とも調和し、社会との関係性をすべて包含しながら活動するのが企業の本来のあり方だと考えます。私たち東ソーとしても、この時代の変化をきちんと踏まえ、事業を展開していくことが必要です。30年前、既にお互いの「協力と感謝」を取り上げていた 『TOSOH SPIRIT』は、現代のCSRとも非常に親和性の高い先進的な理念であったと思います。

私が考える東ソーの社会的責任

私は、自らの事業活動を通してさまざまな側面から社会に貢献していくことこそ、企業として最も大切なことだと考えてい ます。今、社会や市場のニーズは急速に変化しています。当社は素材メーカーですから、社会のニーズに合わせて技術に磨きをかけ、これまで世の中になかった価値をもった製品を創造し、お客さまにお届けすること。それが「東ソーの社会的責任」と思っています。もちろん、その過程において、品質や安全性に徹底してこだわり、自然環境にも配慮することなども責任の一環であると考え、日々、真摯に取り組んでいます。

私どもの製品は、普通に生活をしている分には目にする機会は多くありません。しかし、例えば苛性ソーダや塩酸は、これらの素材がなければ水道水を飲むことができません。また、電子機器に欠かせない素材、バイオサイエンスによる診断試薬やセラミックス製の歯科材料まで、東ソーが世に送り出している製品は、目立たないところで人々の便利な暮らしを支えています。

世の中にない価値を生み出す研究開発

生活の多様化とともに、お客さまから新しい価値をもった素材・製品を要求されるスピードが年々速くなっていると感じます。このスピードに対応するためには、当社が能動的に将来の市場ニーズや社会課題を把握することが欠かせません。今後求められる事業分野を自ら想定し、そこに焦点を当てて研究開発を進めています。社内に設けた選定委員会では、将来注目されるであろう素材や機能の絞り込みを行い、直近では「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」「電子材料」という3つの分野に注力しています。また、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を見据えて、研究開発テーマのマッピングも始めました。

しかし、既に他社が手掛けているものと同じであれば「今まで世になかった価値」とは言えません。あくまでも他社とは異なる角度から焦点を当てて、東ソーでなければ成し得ない製品開発にこだわっています。もちろん、それは口で言うほど容易なことではありません。そのため研究所を7つに再編し、それぞれが分野を特化して研究を行うとともに、研究所の建て替えを計画するなど、研究者が意欲をもって開発に取り組める環境整備も進めています。

2016年度のCSR活動を振り返って

経営課題の一つでもある「安全対策」では、若手技術者への技能伝承や生産革新に取り組むとともに、3年間で100億円を投資した設備健全化工事も着実に実施するなど、ソフトとハードの両面で「事後保全」から「予防保全」へのシフトを進めました。こうした取り組みも功を奏し、2016年度は重大事故が発生しておりません。

環境活動では「エネルギー効率の向上」をテーマに製造方法の見直しを進め「省エネルギー型のものづくり」を追求しています。生産原単位でのエネルギー効率化は、長年継続して取り組んできており、現場の創意工夫による削減は限界に近づきつつあります。そのため当社では、新たなプロセスの確立によって、環境負荷のさらなる削減を目指します。併せて、環境にやさしい素材を開発し、お客さまの製品の環境性能アップに貢献していくことで、間接的にも地球環境の保全に貢献します。

ガバナンス・コンプライアンスでは、これまで東ソー本社を中心に制度整備や意識改革を進めてきましたが、2015年度以降は、グローバルレベルで各グループ会社への横展開を図っています。日本と海外では、商慣行や文化などが異なりますが、徐々にでも改善していきたいと思っています。

社会から信頼される企業であるために

ガバナンス、つまり企業を統治するうえで仕組みや制度を作ることは大事ですが、そこに「魂」が入っていないと意味がありません。経営者自身が本質論としてどのような経営をしたいのか、それが従業員にとっても腑に落ちる形になっていないと良い経営はできないと考えています。実はこの「魂」こそ『TOSOH SPIRIT』にほかならず、想いや魂の入った仕組みや制度を作ることができれば、「風通しのいい会社」にすることができると信じています。

グローバルビジネスの時代に、これまでの日本ならではの経営感覚のままでは通用しません。私は経営者として勇気をもって新しいやり方にシフトする責任があると思っています。

組織のトップとして果たすべき、私の役割

CSR活動を活性化させていくうえで、組織のトップである社長は旗振り役であり、司令塔でもあると考えています。折を見て自社の課題や計画を社内に伝え従業員を鼓舞する。そういう役割を担いたいと思っています。上に立つものが手本を示さなければ、CSR活動は、それこそ「仏に魂入れず」になってしまうでしょう。現在、そして未来に至るまで東ソーが「風通しのいい会社」であり続けるため、当社のCSRが決して口だけのものでないことを、私自身が現場に入り込んで率先垂範していく覚悟をもって取り組んでいきます。

ステークホルダーの皆さまへ

本レポートには、当社の活動実態と今後進むべき方向性をわかりやすくまとめています。ステークホルダーの皆さまには、ぜひ本レポートをご一読いただき、東ソーという会社をさまざまな角度からご評価いただきたいと思います。そして当社に対して忌憚のないご意見・ご要望をお寄せいただけましたら幸いです。