東ソー株式会社 CSR

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TCFD提言に基づく情報開示

ガバナンス

東ソーの気候変動問題への対応は、CSR委員会においてCSR重要課題に設定し、取締役会の承認を得て実行しています。具体的な施策はCO₂削減・有効利用推進委員会、中央エネルギー管理委員会を中心に推進しています。また、気候変動に関連する社会動向、規制要件やリスク管理などの情報収集およびグループ会社を含む社内への情報共有を進めています。活動に関する事項は適宜、取締役会に報告し、承認を受けるとともに、必要に応じて指示を受けています。

推進体制図
推進体制図

CSR委員会

近年、企業の社会的責任(CSR;Corporate Social Responsibility)の重要性が増しています。東ソーグループは、事業活動を通じて、気候変動問題を含むさまざまな社会課題の解決に貢献することが、グループの持続的成長に重要であると認識し、CSRを経営の中核に位置付けた事業活動を推進しています。
CSR委員会は、東ソーグループのCSR活動に関わる重要事項を審議する機関として、社長執行役員がCSR委員会の委員長を務めています。CSR委員会の決議事項は取締役会に報告され、取締役会による承認を受けるとともに、必要に応じて指示を受けます。また、CSR委員会の下、気候変動問題に関わる具体的な活動を推進する機関としてCO₂削減・有効利用推進委員会、レスポンシブルケア(RC)委員会、中央エネルギー管理委員会を設置しています。
気候変動問題は、東ソーグループが取り組むべきCSR重要課題のひとつとして挙げており、委員長である社長執行役員は、気候変動問題に関わる責任を担っています。これに加え、2022年3月に社長が交代し、上記の職責を引き継ぐとともに、前職のCO₂削減・有効利用推進委員会委員長の職務も継続する形となっており、気候変動問題に関わる責任をさらに担う立場となっています。
2022年度は、気候変動問題のKPI(重要管理指標)であるエネルギー起源CO₂排出削減目標に対する2021年度における達成状況を確認し、4年間のサマリーとともに次の3年間の新たなKPIを決議しました。また、2050年カーボンニュートラルに対応する新たなGHG排出量削減方針も策定しました。

2022年度開催実績と審議(報告)内容

  • 2022~2024年度CSR重要課題の設定(取締役会へ上程)
  • 2021年度KPIの進捗評価と2022年度活動方針の提案

CO₂削減・有効利用推進委員会

CO₂削減・有効利用推進委員会は、担当役員(2022年3月以降は社長執行役員)を委員長とし、自家火力発電設備の稼働に伴って排出されるエネルギー起源CO₂の削減および有効利用を積極的に推進するため、燃料転換を含む排出削減、回収や原料化による有効利用に関する課題整理、方針策定、調査・解析および進捗管理などを実施しています。
また、CO₂削減・有効利用推進の体制強化のため、2021年6月にCO₂削減・有効利用戦略室、CO₂削減・有効利用南陽および四日市タスクフォースチームを設置しました。

  • CO₂削減・有効利用戦略室:本社に設置し、全社の戦略立案、政府動向等の情報収集、南陽/四日市タスクフォースチームとの調整等を行う。
  • CO₂削減・有効利用 南陽/四日市タスクフォースチーム:
    南陽/四日市事業所に設置し、各事業所での具体的対策を実行する。タスクフォースチームはCO₂削減・有効利用推進委員会にも所属し、全社での調整をはかる。

2022年度開催実績と審議(報告)内容

  • 2022年度の活動報告(バイオマス発電設備の設置、GI基金事業ほか)
  • GXリーグへの正式参画についての審議
  • 太陽光発電設備設置基準についての審議

中央エネルギー管理委員会

CO₂削減・有効利用戦略室長を委員長とし、生産および輸送にかかるエネルギー原単位の改善を含めた総合的なエネルギーの節減と、エネルギー源の代替推進を目的として取り組んでいます。具体的には、エネルギー管理に関する取り組み方針、中長期計画および年度計画、遵守状況およびその評価手法、エネルギー管理に関する事項などを協議、決定しています。

2022年度開催実績と審議(報告)内容

  • 前年度のエネルギー使用実績の確認と2022年度の取り組み・方針
  • 省エネ法改正内容(非化石エネルギー導入促進)の周知と対応方針

グループCSR推進連絡会

東ソーCSR推進室が事務局となり、気候変動問題の社会動向などの情報共有、グループ全体のGHG排出量の取りまとめに関して意見交換をしています。

戦略

シナリオ分析

シナリオ分析とは、気候変動問題やそれに対応するための長期的な政策動向などが経営環境をどのように変化させるかを予想し、そのような変化が自社の経営戦略にどのような影響を与えるかを検討することです。東ソーグループは、シナリオ分析を行うことで、気候変動問題に関するリスクと機会による影響を把握し、中長期の経営計画に反映させることで、サステナブルな社会の実現に向け、社会課題の解決に貢献する製品・技術・サービスの提供を一層進める戦略を策定していきます。
東ソーグループの2022年度セクター別売上高、およびGHG排出量は下図のようになります。
東ソーグループ全体としての重要課題は、GHG排出量の削減であり、エネルギー多消費型の製品・技術の分析が中心となります。今回は、全社的なシナリオ分析を実施すると共に、4つのセクター(①石油化学、②クロル・アルカリ、③機能商品、④エンジ・その他)の中から、東ソーグループのGHG排出量(スコープ1+2)の62%を占める②クロル・アルカリセクターにも注目したシナリオ分析を実施しています。

2022年度セクター別売上高およびGHG排出量
2022年度セクター別売上高およびGHG排出量

東ソーグループ全体の評価

現状の東ソーグループのGHG排出量は化学業界のなかでも高いレベルにあり、GHG排出量削減が必須の課題となります。GHG排出量の約80%を占める自家火力発電設備での燃料転換、再生可能エネルギー調達などが重要な取り組みとなり、すでに具体的な対応を開始しています。事業機会は、コモディティ、スペシャリティとも幅広い事業領域にわたって可能性が見出されました。気候変動問題への対応をチャンスと捉え、幅広い視点で将来を見据えた技術・製品開発に注力していきます。

クロル・アルカリセクターの評価

クロル・アルカリセクターは、化学品事業(苛性ソーダ、VCM、PVC、塩素誘導体ほか)、ウレタン事業(MDI、機能性ウレタンほか)、セメント事業からなります。塩水の電気分解により製造される苛性ソーダ・塩素を活用した事業であり、化石燃料(石炭・石油コークスほか)を用いた自家火力発電由来の電力を多量に消費しているため、GHG排出量の多いセクターとなっています。このため、エネルギーコストの上昇の影響を最も大きく受ける本セクターの重要課題も、東ソーグループ全体と同様に自家火力発電設備の燃料転換となります。エネルギーコストの上昇幅を抑えながら製品製造時のCO₂排出原単位を低減し、低炭素・脱炭素価値を製品価格に転嫁する仕組みづくりが重要と考えています。
また、本セクターの製品は基礎素材が多くを占めるため、その用途が多岐にわたり、気候変動問題の影響がリスク・機会となる用途が並立していることから、現段階ではリスク・機会の一方に偏った分析結果とはなりませんでした。長期的にも底堅い需要があり、東ソーグループの基盤を支える重要な事業の一つと位置付けられます。

シナリオ分析の進め方

シナリオ分析は、「シナリオ分析の進行」に従って進めています。「シナリオ分析の前提」に示した2つのシナリオを基に、2030年と2050年の時間軸における移行リスク・物理的リスク、気候変動問題に関連する事業機会について、多方面から可能性がある項目のリストを作成、定性分析を実施しながら絞り込みを行い、定量分析するべき項目を特定しています。
また、東ソー本体とグループ会社だけではなく、サプライチェーン全体(「原料・資材(調達)」「加工・製造」「物流」「販売」「消費」「廃棄・リサイクル」)を考慮して、東ソーグループへの影響分析を実施しました。

シナリオ分析の進行

各ステップの概要具体的な分析条件・実施内容
ステップ1
気候関連リスクの重要性評価
気候変動に関連する当社事業へのリスクと機会の選定(定性分析)
  • 気候変動関連の重要課題
    • 市場と技術の転換
    • 評判
    • 政策と法令
    • 物理的リスク
ステップ2
シナリオの特定と定義
気候変動に関連する当社事業変化の影響検討(シナリオ分析)
  • 対象事業:全社+クロル・アルカリセクター
  • 対象期間:~2030年、~2050年
  • シナリオ:1.5℃、4℃
ステップ3
事業への影響評価
定義されたシナリオごとの将来の事業予測と財務インパクト試算(定量分析)
  • 事業インパクトの特定
  • リスクと機会を反映した戦略策定
ステップ4
潜在的な対応策の特定
特定されたリスクと機会への対応策、管理指標の設定
  • 対応策
    • 自家火力発電設備の燃料転換を中心としたGHG排出削減
    • 環境貢献製品の開発と適切な価格転嫁
  • 管理指標
    • 2030年削減目標、2050年カーボンニュートラル
    • 環境貢献製品の売上拡大
ステップ5
開示(社内外)
関連当事者への理解の醸成とステークホルダーへの開示
  • ガバナンスにおける報告・提言ルートでの承認、周知
  • WEBサイト、統合報告書での開示

シナリオ分析の前提

各シナリオの内容
+1.5℃シナリオ
  • 気温上昇を+1.5℃に抑制するためにCO₂排出抑制を強力に進めるシナリオ(WEO:Net Zero Emissions by 2050 Scenario[NZE]※1
⇒ 法規制の強化と社会や市場の大きな行動変容を移行リスクとして検討
+4℃シナリオ
  • 温暖化対策が十分に進まず産業革命以前に比べて2100年の気温上昇が4℃と見積もられるシナリオ(IPCC SSP5-8.5※2
⇒ 異常気象と社会・生態系の変化を物理的リスクとして検討
  1. 国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)作成のWEO(World Energy Outlook)2022に掲載されたシナリオの一つ。2100年の気温上昇を+1.5℃に抑えるために、2050年に世界ネットゼロを達成するためのシナリオ。
  2. 気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の第6次評価報告書に掲載されたシナリオの一つ。SSPはShared Socioeconomic Pathway、共通社会経済経路の略でSSP5-8.5は地域対立的な発展のもと、気候政策を導入せず、2100年に+4.4℃(可能性の高い範囲:3.3-5.7)まで気温が上昇するシナリオ。

サプライチェーンを通した分析

サプライチェーンを通した分析

シナリオ分析の概要

移行/物理的リスク

青字は、クロル・アルカリセクター関連です。
リスク要素財務影響要素定性評価求められる対応(:実行中)
1.5℃(2050年カーボンニュートラル(CN))シナリオ
GHG排出規制
の強化
カーボンプライシングの上昇等に伴い、化石燃料由来のコスト増加
  • 自社の脱炭素への取り組みの遅れにより、炭素税見合いで操業コスト増加
    【定量評価①】
  • 社内炭素価格を投資判断へ活用(CO₂削減投資の推進および能力増強等に伴うCO₂増加を考慮した事業性評価)
  • GHG排出量の約80%を占める自家火力発電設備の化石燃料からの燃料転換技術検討
    • 脱炭素燃料の多様化
    • 将来の燃料構成、操業コストへの影響、補助金活用等を考慮した投資判断
    • バイオマス発電設備投資を決定
      (▲50万トン-CO₂)
  • コンビナート連携による効率的な自家火力発電設備の燃料転換やCN技術実装への取り組み
  • GXリーグのルール形成WG等でのCO₂削減対策コストの適切な価格転嫁の仕組みづくりの検討
再生可能エネルギー使用比率の増加に伴い、エネルギーコスト増加
  • 顧客要求、政府要求に沿った再エネ比率拡大による操業コスト増加
脱炭素技術
への移行
自家火力発電設備の燃料転換に伴い、設備投資・燃料コスト増加
  • 発電設備の脱炭素化に向けた設備投資コストの増加
    【定量評価②】
  • 発電設備の脱炭素化に向けた燃料コストの増加
原材料コスト
の変化
バイオ原料の需要の高まりに伴い、原材料コスト増加
  • 環境対応型のバイオ原料(ナフサ、ベンゼン等)の供給能力不足も踏まえた調達コスト増加
  • バイオ原料製品需要の把握、原料調達先の多様化
  • 購入原燃料のCFP(カーボンフットプリント)およびその低減計画の調査
カーボンプライシングの上昇等に伴い、原燃料コスト増加
  • 原燃料供給元の脱炭素への取り組みに伴うコスト増加分の購入価格への転嫁
消費者行動
の変化
低炭素製品の認識や循環型経済への移行に伴い、GHG多排出製品の売上減少
  • エネルギー多消費型製品、循環型経済への移行要求の高い製品の売上減少
  • 製品別CFPの算出と開示
  • CO₂フリー製品供給体制の構築および認証取得
  • 循環型経済に対応した素材開発、循環システムの開発
EV車の市場拡大に伴い、ガソリン/ディーゼル車関連製品の売上減少
  • 内燃機関関連素材の売上は2035年頃までは維持
  • 合成燃料を含めた各国の規制動向の注視およびタイムリーな製品開発&市場投入
  • 触媒技術の優位性を活かした新規用途開発
4℃(現状維持)シナリオ
異常気象
の激甚化
想定以上の風水害に伴い、洪水発生やサプライチェーン寸断による損失拡大
  • 国内拠点工場での洪水・高潮による浸水損害発生
    【定量評価③】
  • 環境変化に応じた事業継続対策の実施
    • 津波・高潮による浸水対策として、主要電機設備等を中心とした被害抑制対策を実施済み
    • 地震・津波リスクの高い四日市で1.25mの浸水深を想定した安全停止・早期復旧対策を実施中
  • 原料、製品在庫能力の見直しおよび製品基地の整備
  • サプライチェーンを通してのBCP対応の強化
  • 国内拠点工場停止により、サプライチェーン下流工場(クロル・アルカリ海外拠点等)の稼動低下
  • 原燃料および顧客の製造拠点停止による工場稼動低下
  • 船舶の着桟制限や航路迂回等による工場稼働低下および物流コスト増加
平均気温
の上昇
気温上昇に伴い、各種操業コスト増加
  • 工場定期修理時の熱中症発生リスク増加による、作業効率低下および停止期間延長
  • 工場の冷却設備能力不足による生産能力低下
  • 当該作業発生時の健康管理体制の強化
  • プラント設計基準の見直し

リスク要素に対する財務インパクトの算定例

【定量評価①:カーボンプライシングの上昇】
財務影響要素
東ソーグループの2022年度GHG実績排出量(スコープ1&2)は811万トンであり、脱炭素への取り組みの遅れにより、炭素税見合いで操業コストが増加するリスクが想定されます。
算定条件
  • 東ソーグループ各社の製造拠点の所在国別に2022年度のGHG排出量を集計し、それに下記炭素価格を乗じて算定。
  • World Energy Outlook 2022のNZEシナリオ 炭素価格(1ドル=130円)を使用。
[ドル/トン-CO₂]
 2030年2050年対象拠点
Advanced economies140250日本、アメリカ
Emerging market90200中国、インドネシア、ギリシャ
Other25180フィリピン、マレーシア
評価結果
2022年度からGHG排出量が変化しなかったと仮定した場合の炭素税負担額。
2030年度:約1,500億円、2050年度:約2,600億円
求められる対応
  • 東ソーグループ全体のGHG排出量を2018年度比で2030年30%削減し、さらには2050年CNを達成することで、影響額の低減を図ります。
  • 社内炭素価格(6,000円/トン-CO₂)を設備投資時の採算性評価に活用しています。CO₂削減投資を推進し、能力増強等によりCO₂が増加する投資についてはそのコストアップを考慮した事業性評価を行っています。
【定量評価②:自家火力発電設備の燃料転換】
財務影響要素
南陽、および四日市事業所の自家火力発電設備から排出されるGHGが東ソーグループの排出量の約80%を占めているため、CO₂フリー燃料への燃料転換が重要課題となり、設備投資コストや燃料コストの大幅な増加リスクが想定されます。
算定条件
  • GHG排出量を2018年度比で2030年に30%削減し、2050年にCNを実現するモデルケースの燃料構成を前提に必要な設備投資額と燃料コストの増加を試算。
    • 2030年はバイオマス燃料混焼およびクラッカー副生ガスの有効利用等によりGHG削減
    • 2050年はバイオマス、アンモニア、水素などのCO₂フリー燃料のみでの発電を想定するが、現段階では設備投資額および燃料コストの試算は困難
  • 比較基準(=1)として2018~2022年度の平均燃料コストを使用。
  • 各種燃料コストは、自社購入価格、政府・関係団体資料等に基づいた推定値を使用。
評価結果
2030年度のGHG排出量30%削減に向けた燃料転換による累積設備投資金額。
~2030年度:約900~1,200億円
2030年度のGHG排出量30%削減に向けた燃料転換による燃料コスト増加率。
2030年度:現状+20%
燃料コスト試算
燃料コスト試算
求められる対応
  • CNに向けて自家火力発電燃料の多様化(各種バイオマス、アンモニア、水素)および再生可能エネルギー電力の購入を検討しています。ウェブサイトCSR「GHG削減・削減貢献に関する取り組み」参照
  • 設備投資への補助金や燃料への値差補填など、政府補助の有効活用を図りつつ、操業コストへの影響をできるだけ抑えた燃料転換の手法を検討しています。
  • 周南、および四日市のコンビナート各社との燃料調達などにおける連携により、発電設備の効率的な脱炭素化を推進します。GHG排出量を削減して製造したグリーン商材に対し、その付加価値を価格転嫁するための仕組みづくりの議論をGXリーグ等で進めていきます。
Topics

2022年7月、南陽の老朽化した石炭焚き微粉炭ボイラをバイオマス専焼が可能な循環流動層ボイラへの更新を含むバイオマス発電設備を新設する投資を決定。
(設備投資額:約400億円、GHG削減計画量:約50万トン、本計画による変動費増加:なし)

【定量評価③:洪水・高潮の発生による生産拠点の浸水】
財務影響要素
4℃シナリオ(SSP5-8.5)において異常気象が激甚化し、南陽、および四日市の両生産拠点が高潮等の影響で浸水することにより、資産の毀損が発生し、稼働停止による売上機会損失が発生するリスクが想定されます。
算定条件
  • 東ソー本体の製造拠点である南陽事業所(山口県周南市)、四日市事業所(三重県四日市市)において、AQUEDUCTを用いた2030年、2050年の洪水と高潮による浸水深を民間気象会社によるシミュレーションにて算定。
    • 100年に1度の確率で発生(=100年確率:単年での発生確率1%)する浸水深を算定。5つのシミュレーションモデルの最大値を引用。
    • 大都市の河川などの防災計画の計画規模(対策の目標)は、100年~200年確率の規模で計画。
  • 内閣府の防災経済コンソーシアムが作成した『自然災害が事業に与える影響の参考指標ツール(洪水害版)』に、以下のデータを入力することで、上記シミュレーションで算定した浸水深による財務インパクトを試算。
    ①業種(=製造業)、②従業員数(≒事業規模)、③地形(=平野部)
  • 世界資源研究所が提供する水リスク評価ツール
評価結果
2030年、2050年時点で100年に1度の確率で発生する洪水・高潮による浸水被害の最大の資産毀損金額(1回分)。
2030年度:約50億円/最大時、2050年度:約90億円/最大時
求められる対応
  • 津波・高潮による浸水対策として、主要電源設備等を中心とした被害抑制対策を実施済みです。
  • 地震・津波リスクの高い四日市事業所において、南海トラフ地震の想定津波による浸水深さ1.25mを前提とした工場の安全停止および早期稼動対策を実施中です。
  • 将来の気温上昇予測にもとづいた洪水・高潮に関するシミュレーションを定期的に実施し、その結果に応じて安定稼働に必要な措置を検討します。

気候変動問題に関連する事業機会

青字は、クロル・アルカリセクター関連です。
機会要素財務影響要素定性評価求められる対応(:実行中)
1.5℃(2050年カーボンニュートラル(CN))シナリオ
貢献製品・技術
の需要増加
循環型経済への移行に伴い、リサイクル関連技術の事業機会拡大
  • 複合プラスチックのマテリアル&ケミカルリサイクル技術の確立による環境貢献
  • リサイクルに適した機能性商品開発の強化
  • 静脈産業と協力したリサイクルチェーンの構築
CCUS需要拡大に伴い、CO₂回収・有効利用技術の事業機会拡大
  • 自社アミン吸収液や分離膜を用いたCO₂分離・回収技術の確立によるCCUS需要への対応
  • CO₂分離素材(アミン吸収液、ゼオライト等)の売上増加
  • CCUS関連研究開発の推進
  • ハードを含めたCO₂回収技術の品揃え強化
  • 南陽COプラントでのCO₂原料化の実証(投資決定)によるCO₂分離、回収ノウハウの蓄積
CCUS需要拡大に伴い、CO₂を原料とした製品の需要拡大
  • CO₂を原料としたウレタン製品の売上増加
  • 微細藻類を原料としたウレタン製品の売上増加
  • 需要に合わせた安定供給体制の構築
  • CO₂を原料とする化学品の市場での認知度拡大と、グリーン商材としての適切な価格転嫁の仕組みづくり
省エネ建築(ZEB,ZEH)の普及に伴い、関連建築素材の需要拡大
  • 断熱性能に優れた建築素材の売上増加
  • CNに資する建築資材の安定的供給
EV車の市場拡大に伴い、関連製品の売上増加
  • 蓄電池の需要拡大に伴い、構成部品の製造に必要な基礎化学品の売上増加
    【定量評価④】
  • 燃料電池車用SOFC向けセラミックス原料の売上増加
  • 低燃費タイヤ原料の売上増加
  • EV関連製品の研究開発の加速
  • 需要に応じた適切な供給体制の確保
電解技術の需要拡大に伴い、関連製品の売上増加
  • 省エネ型電解槽の共同開発によるCO₂排出削減貢献
  • 省エネ電極技術の水電解への展開による売上増加
  • 副生水素の高付加価値化による売上増加
  • 水電解用SOEC向けセラミックス原料の売上増加
  • さらなる省エネ型電解槽の開発とその普及
  • 電解槽周辺技術開発の加速
  • 水素誘導品開発とビジネスモデルの構築
4℃(現状維持)シナリオ
異常気象
の激甚化
異常気象の激甚化に伴い、インフラ関連製品の需要拡大
  • 災害予防のためのインフラ設備補強用建築材料の売上増加
  • 海外を含めたニーズ調査と製品の安定供給体制の確保
感染症の拡大に伴い、関連製品の需要拡大
  • 感染症診断装置/試薬の売上増加
  • 塩素系殺菌剤の売上増加
  • 研究開発の継続と、BCP対策を含めた安定供給体制の確保

機会要素に対する財務インパクトの算定例

【定量評価④:EV関連素材の売上増加】
財務影響要素
自動車の電動化(EV)において、蓄電池は最重要技術とされています。蓄電池の構成部材として正極材料がありますが、正極材料の製造には純度の高い苛性ソーダが使用されます。蓄電池市場の拡大に伴い、苛性ソーダの使用量増加(ビジネス拡大)が期待されます。
算定条件
  • 経済産業省の「蓄電池産業戦略(蓄電池産業戦略検討官民協議会)」の蓄電池市場の拡大想定データを引用。
  • 現状の正極材料向けの苛性ソーダ販売単価に市場の成長予測係数を乗じて試算。
評価結果
2030年、2050年時点における蓄電池構成部材の製造に必要な苛性ソーダ売上増加金額:
2030年度:約120億円、2050年度:約200億円
求められる対応
  • 幅広い分野から情報収集を行うことで、気候変動問題に対応した製品・技術を早期に把握し、経営資源を投入していきます。
  • 顧客との対話を丁寧に行うことで、市場が求める製品の品質、量、時期を早期に把握し、事業戦略に反映していきます。

クロル・アルカリセクターの製品による環境貢献

東ソーのクロル・アルカリセクターに属する事業は、多用途に向けた基礎原料やプロセス原料を提供しています。気候変動問題関連の緩和や適応に対応した多分野での事業機会を有しています。

クロル・アルカリセクターの製品による環境貢献

(参照)省エネ建築関連素材の普及
2050年のカーボンニュートラルの目標に対して、建築物(住宅)の断熱によるGHG削減は、長期にわたる効果から重要な役割を担っています。東ソーの扱う素材(塩ビ樹脂、ウレタン樹脂)もGHG削減に貢献しています。ウェブサイトCSR「社会課題ソリューション」参照

省エネ建築関連素材の普及

リスク管理

気候変動問題が及ぼす可能性のあるリスクは、社会動向や日本政府の協議・議論の状況などの情報を活用し、CSR委員会を通じて、所管部門ごとに評価しています。GHG排出量削減や有効利用に関する総合的なリスク管理は、CO₂削減・有効利用推進委員会が担当しています。事業運営に関わるリスクを管理する各部門は、部門に関わるリスクの特定と起こりうる可能性がある財務的影響を評価し、社長に報告しています。日常の各事業活動におけるリスク管理は担当取締役の下で自律的に運営し、必要に応じて取締役会に諮り承認、指示を受けています。また、設備投資計画の策定の際に内部炭素価格を採用しており、採算だけでなく環境影響度も含めて検討しています。気候関連のリスクはCSR重要課題にも挙げており、その進捗状況はCSR委員会から取締役会に報告し、PDCA管理をしています。
CO₂削減・有効利用推進委員会では、CO₂の排出削減および化学品原料としての有効活用に関わる戦略立案、課題整理、方針策定、調査・解析および進捗管理などを推進しています。リスクと機会の評価を通して、2050年カーボンニュートラルに挑戦するためのロードマップも策定しています。
リスクとして、東ソーは化学製品の生産に必要な電力を安価かつ安定的に確保するため、高効率のコージェネレーション自家火力発電設備を有しています。今後、炭素税や排出権取引制度が導入されると、新たな費用負担が発生します。炭素税の影響については、戦略の中で定量評価しています(「戦略」参照)。例えば、削減目標達成のために排出権取引で炭素価格100ドル/トン-CO₂(130円/ドル)が適用され、10万トン-CO₂相当の排出権を購入する場合、約13億円の費用負担となります。
機会の獲得として、既存製品の環境貢献評価の検討を開始しており、環境負荷低減製品・サービスの市場拡大に対応し拡販を図っていきます。研究開発では「ライフサンエンス」「電子材料」「環境・エネルギー」を重点分野に設定し、気候変動問題に関連する市場ニーズや社会課題に応える製品・サービスの創出を進めています。

  • コージェネレーション:発電の際に生じる熱を回収して利用するシステム。

想定している気候関連リスクと機会

 リスク機会
中期(~2030)長期(~2050)中期(~2030)長期(~2050)
政策・法規制炭素価格(炭素税、排出権取引)コスト増加
  • 低炭素・脱炭素社会へのイノベーション
    環境負荷低減製品・サービス(環境貢献製品の拡販)
    クリーンエネルギー使用事業所
    CO₂分離・回収・再資源化技術
  • インフラの強靭化
    都市基盤構築(建設材料)
    情報網の建設(IT材料)
    快適な生活支援(QOLの向上)
    事業所基盤構築(安全・安定供給)
技術混焼技術の導入
(水素・アンモニア・バイオマス・廃プラ)
再生可能エネルギー
の導入
市場・評判原材料・エネルギー(供給・価格)
消費志向・ステークホルダー
気象異常気象
(風災害、大雨、渇水)
慢性的な被害
(気温上昇・海面上昇)

2050年に向けたロードマップ

2050年に向けたロードマップ

指標と目標

GHG排出量目標

気候変動問題は世界で最も関心が高い社会課題となってきており、その中心であるGHG排出量削減目標のレベルアップが求められています。2020年10月の日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言および2030年度のGHG排出量削減目標の再設定を受けて、東ソーにおいてもそれまでの2025年度目標(2013年度基準に対する単体のBAU排出量)を見直し、東ソーグループ全体でのGHG排出量削減方針を2022年1月に新たに策定しました。

GHG排出量削減方針

  • 2030年度までにGHG排出量(スコープ1+2)を2018年度比で30%削減
  • 2050年カーボンニュートラルへの挑戦

また、東ソーが所属する一般社団法人 日本化学工業協会(日化協)は、2023年3月に2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度の目標を次のとおり設定しました。

  • 2030年度に32%削減(2013年度比)

東ソーの新たに設定した目標は、日化協の新規目標に沿うものであり、会員企業として業界目標の達成にも貢献していきます。

  • BAU(Business As Usual)排出量=生産量×基準年のCO₂原単位。
東ソーグループGHG排出量削減計画
東ソーグループGHG排出量削減計画

気候関連指標カテゴリー

1. GHG排出量(実績)2022年度排出量「GHG排出量・エネルギー使用量の実績」を参照
2. 移行リスク「リスク管理」参照
炭素価格など政策・法規制、再生可能エネルギー導入(燃料転換)など技術イノベーションの進捗、消費者志向に関わる 市場・評判
3. 物理的リスク「リスク管理」参照
異常気象(洪水や高潮など)により操業停止や物流(調達・出荷)遅延
4. 気候関連の機会「リスク管理」参照
環境負荷低減に貢献する製品・サービス、都市基盤構築に寄与する素材、製品の安定供給に備える事業所基盤構築
5. 資本配分「戦略」参照
2030年度までに 気候変動問題関連投資として1,200億円、2026年度までに600億円の投資(投資決定金額ベース)を計画
6. 内部炭素価格東ソーは、GHG排出量の低減に資する設備投資の促進を図るため、内部炭素価格制度(6,000円/t-CO₂)を適用しています。
7. 報酬ウェブ サイトCSR「ガバナンス」参照