PROFILE

学生時代に磨いた分子生物学の専門性を生かしたい。その思いから、私は東ソーのバイオサイエンス分野を志望しました。入社以来、免疫診断装置で使われる試薬カップ向けの抗原取得に一貫して携わり、現場で必要とされる抗原を自らの手でつくり上げてきました。学びを“社会で使われる技術”へと転換できるこの仕事に、大きなやりがいを感じています。

異なる分野の技術を掛け合わせ、
まったく新しい価値を生み出していく。
その研究姿勢に強く心を惹かれました。

なぜ東ソーへ?

大学では、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を抑えることで、「がん細胞が増えにくくなる仕組み」を探る研究に取り組んでいました。形ある製品に直結するテーマというより、原理や現象の解明を目指す基礎研究でしたが、生命のメカニズムに直接触れる経験は非常に刺激的で、「大学で培った経験を将来の仕事につなげたい」と自然に思うようになりました。
就職活動では、「研究成果が実際に目に見える形で社会に届くことが、自分のモチベーションになるのではないか」と考え、メーカーを志望しました。ただし大学時代に専攻したライフサイエンス領域に限定せず、さまざまな分野の技術を横断的に扱い、広い視点で研究に取り組める企業を調べました。その中で浮かび上がってきたのが、総合化学メーカーである東ソーでした。

入社の決め手は?

会社説明会では、自分が求めていた分野横断的な技術開発の事例を丁寧に紹介していただき、東ソーへの関心が一段と高まりました。なかでも印象に残ったのが、血中にごくわずかに存在するがん細胞(血中循環がん細胞:Circulating Tumor Cells)を検出するための細胞検出チップです。化学メーカーと聞いて一般的に想像される材料合成の技術にとどまらず、「超精密加工の領域」にまで踏み込んでいる点が、強く心をつかみました。
異分野の技術を組み合わせて新しいモノを生み出す。それはまさに、自分が研究で挑戦したい方向性そのものでした。また、選考の過程でお会いした社員の方々の、研究に対する真摯な姿勢や温かい人柄にも大いにひかれました。

免疫診断装置の核となる
試薬に必要な
抗体の取得に取り組んでいます。

現在の業務内容は?

東ソーの免疫診断装置 AIA® シリーズで使用される試薬カップに組み込む「抗体」の取得を担当しています。AIA® 製品は、血液中の特定タンパク質を自動で検出する装置であり、装置本体と試薬の入ったカップがそろって初めて機能を発揮します。タンパク質を検出するために必要な抗体を、どのような方法で取得するか実験計画を立て、得られた抗体の性質や反応性を評価し、試薬として使えるかを判断するのが私の役割です。診断装置そのものをつくっているわけではありませんが、装置の正確さを左右する「反応の中心部」を担っているからこそ、「自分の研究が医療の現場で確かに役立っている」という手応えがあります。

開発の流れを教えてください。

私の仕事は、AIA® 製品で新たに測定したい項目や、既存試薬の改良ニーズが営業部門から届くところから始まります。グループリーダーが課題を整理し、「この抗原に対する抗体を取得してほしい」とテーマを振り分け、各メンバーが研究を進めます。テーマを受け取ると、まず「動物免疫」に着手します。抗原を動物に投与して抗体を産生させ、最適なタイミングを見極めて回収し、その後、得られた抗体の性能評価を行い、要求水準を満たしているか確認します。
当然ながら、研究は計画どおりにいくとは限りません。条件を変えながら何度も動物免疫からやり直し、検証を積み重ねてゴールに近づけていく──そんな地道なサイクルを日々繰り返しています。

重要な一つのテーマを
自分一人に任せてもらえる、
その責任の大きさが開発の原動力です。

仕事のやりがいは?

私のチームでは、基本的に「一つの開発テーマに一人の担当者」が割り当てられます。ある抗体取得テーマが立ち上がれば、その結果は自分の手に委ねられます。自分が成果を出せなければ装置の進化が滞ってしまい、私が担当する抗体が取得できないことで困る患者様や医療関係者がいるかもしれません。こうした責任ある開発に主体的に取り組める環境には大きなやりがいがあり、同時にプレッシャーもあります。とはいえ、開発を前に進める力をすべて自分だけで生み出す必要はありません。隣のグループの担当者に抗体の特徴について意見を聞いたり、周囲の「経験者」に相談したりすることができます。自分のテーマには自分で責任を持ちつつ、必要なときには周囲の知恵を借りる。その“自力と他力のバランス”が心地よく、成長を後押ししてくれる職場だと感じています。

印象に残るエピソードを教えてください。

入社して最初に任されたテーマは、今でも強く印象に残っています。新人の頃は、生物化学の基礎知識はあったものの、開発の出発点である動物免疫や、抗体取得のための抗原調整など、わからないことばかりでした。それでも、OJT担当の先輩に教わりながら必死に取り組み、指定された抗体を無事に取得して納品することができました。従来は測定できなかった成分の測定を目指した、新規品開発に伴う難易度の高いテーマだったため、達成感はひとしおでした。しかも、その時に取得した抗体を搭載した試薬カップが製品として上市されることも正式に決まり、大きな励みになっています。

「できることが増えてきた」
「深く考えられるようになった」
そう実感できる環境があります。

今後の目標や将来の夢を教えてください。

当面の目標は、現在担当しているテーマを確実に達成することです。自分が取得した抗体が採用され、二つ目、三つ目と製品の上市につながる実績を積み上げていきたいと考えています。一方で、少し先の夢として思い描いているのは、抗体を取得するための新しい方法論をつくり出すことです。現状は比較的オーソドックスな手法を用いることが多いのですが、抗体取得の技術は日々進歩しており、「より多様な抗体が得られる手法」や「スピーディに取得できる手法」など、新しいアプローチが次々と生まれています。いずれは既存手法の工夫にとどまらず、「まったく新しい抗体取得法を自分の手で確立したい」と思っています。それは、経験をしっかり積んで初めて挑戦できるテーマだと考えているため、まずは目の前の課題を着実にこなしていきます。

学生たちへのメッセージをお願いします。

入社直後は、私もそうだったように「わからないことだらけ」だと思いますが、不安に感じる必要はありません。困ったり迷ったりした時には、定期的な報告会でグループ内外の方からアドバイスをいただけますし、そのテーマに詳しい先輩や他部署の方にも気軽に相談できます。周囲からサポートを受けながら、自分に任されたテーマを一歩ずつ前に進めていく。その積み重ねの中で、「できることが増えてきた」「前より深く考えられるようになった」と自分の成長を実感し、モチベーション高く働き続けることができます。こうした環境こそが、開発者にとっての東ソーの大きな魅力だと思います。