安全・安定操業

基本的な考え方

東ソーグループは、2013年7月に石油化学工業協会が制定したガイドライン「産業保安に関する行動計画」を踏まえ、RC推進体制の下で、安全・安定操業に関する活動を推進しています。従業員の安全・健康の確保と安定操業が経営の最重要課題であることを認識し「安全がすべてに優先する」という、環境・安全・健康基本理念および行動指針に基づき、無事故・無休業災害を目指して「安全基盤の強化」と「安全文化の醸成」を基本とした多様な安全活動を継続して展開しています。また自然災害などの事業リスクに備えた事業継続計画(BCP)の取り組みを進めます。

2020年度の実績

2020年度は東ソーで6件の事故が発生しました。事故発生時には事故対策委員会にて原因究明と対策を決定し、社内やグループ会社に対して説明会を開催して事故情報の水平展開を行い、再発防止を図っています。

  • 事故発生件数事故発生件数
  • 事故発生強度※1事故発生強度
  1. 石油化学工業協会の事故評価基準によって、それぞれの事故の重大性を定量的に評価した数値(米プロセス安全センター(CCPS)の評価法に準拠)。

安全確保に向けた取り組み

社長による計器室訪問

2012年度から毎年、社長が南陽および四日市事業所の製造現場に出向き現場と直接対話を行うことで、経営者の安全に対する考えと現場課題の従業員との共有化や、従業員のモチベーションアップにもつながっています。2012〜2019年の8年間で延べ245カ所の計器室や事務所を訪問し、延べ5,500人以上の従業員と対話を行いました。2020年度は新型コロナウイルス感染予防のため中止しました。

教育の充実

プラントの安全・安定的かつ効率的な運転を達成するため、関係部門と連携のうえ、現場の声を反映させたさまざまな教育を実施しています。
技術教育は危険体感実習※2とVR危険体感教育などを実施しています。その他にもシミュレーターおよび体験型学習装置※3などを運用しています。2020年度は、危険体感教育のさらなる充実に向けて実習設備3台を新たに導入しました。教育・訓練の充実を図り、安全・安定運転に関する知識・技能の習得と現場力の向上に努めています。訓練では、個人に提供されている保護具(保護めがね、保護手袋、ヘルメット)の使用状態の確認も行っています。
また、外部講師を招いたKYT講習※4とフォローアップ講習を開催し、危険を予知・予測して、安全を先取りする感受性やチームワークを高めています。加えて、KYT講習は協力会社にも推進しており、事業所の全就業者が安全意識の醸成を図っています。

  1. 挟まれ、巻き込まれ、落下や被液、静電気などの現場の危険を身をもって体験することのできる実習。
  2. 化学プラントの基本操作である蒸留塔の原理、特性を体感できる設備で、蒸留塔の起動停止や異常時の対応などを学ぶことができる。2017年度に導入。
  3. 危険予知訓練。行動する前に作業にひそむ危険要因とそれが引き起こす現象を小集団で話し合い、危険のポイントや重点実施項目を認識する訓練。
  • 被液危険体験・安全装置作動体験装置被液危険体験・安全装置作動体験装置
  • 液飛散危険体感装置液飛散危険体感装置
  • 脚立ぐらつき危険体感装置脚立ぐらつき危険体感装置
  • VR危険体感教育VR危険体感教育
  • 保護具装着訓練保護具装着訓練

主な安全教育の受講人数

  • 主な安全教育の受講人数
  1. KYT講習は外部講師によるフォローアップ講習を含む。

防災訓練

東ソーでは、従業員の当事者意識の向上や緊急時の対応能力を身につけるため、事業所、研究所、本支店ごとに防災訓練を実施し、不測の事態に備えています。行政とともに行う総合防災訓練では、漏えい・火災などの災害想定だけでなく、大規模地震による津波を想定した避難訓練も実施し、地元の自治会に公開しています。各プラントでは緊急停止対応、油流出時の緊急対応(オイルフェンス展張など)や、初期消火のホース展張・放水、保護具(空気呼吸器など)装着訓練を手順書に基づいて定期的に行い、現場対応の向上を図り有事の際に備えています。
また、事故発生時の広報体制として「石油コンビナート災害時の住民広報マニュアル」に基づき、体制を整備しています。加えて、緊急時の地域への対応として、有事の際の対応や注意点などを製品ごとにまとめた小冊子を作成しています。
その他にも、毎年マスコミ関係者を講師に招き、模擬記者会見と演習講演を行い、リスクコミュニケーション力の強化を図っています。(2020年度は、新型コロナウイルス感染予防のため中止しました。)

  • 公設消防との合同放水訓練(四日市事業所)公設消防との合同放水訓練(四日市事業所)
  • 常設防災本部(南陽事業所)常設防災本部(南陽事業所)
名称実施月実施地域参加人数
(延べ)
内容
上期総合防災訓練2020年9月南陽76大規模地震を想定した複数個所の同時発災訓練
総合防災訓練2020年10月本社/
四日市
18/
200
本社と四日市事業所を連携した、四日市市消防本部の立ち会いのもと実施のブラインド型防災訓練
総合防災訓練2020年10月東京研究
センター
500職場班、消防隊各班の点呼報告、机上訓練
下期総合防災訓練2020年11月南陽380周南市消防本部と合同による大規模地震を想定した桟橋での発災訓練
総合防災訓練2020年12月四日市600大規模地震を想定した霞コンビナート全体での津波避難訓
プラントごとの訓練年間通して実施各事業所
  • プラント緊急停止、放水訓練(1回/月)、保護具装着訓練(4回/年)
  • 防災センターとの合同による放水訓練(南陽事業所のみ全体で22回)

地震・津波対策の推進

避難などの対応訓練だけではなく、設備対応も順次進めています。地震対策では、南陽および四日市事業所の高圧ガス貯槽の耐震補強工事が、2020年度に完了しました。また、従業員が常駐する計器室・事務所などの耐震補強工事を順次進めています。津波対策では、電気設備(高床式)への対応、浸水レベルの現場表示を順次進めています。

  • 浸水レベルの現場表示(四日市事業所)浸水レベルの現場表示(四日市事業所)

事業継続計画(BCP※6)の取り組み

東ソーでは、大規模災害や新型ウイルスによるパンデミックなどの不測の事態が発生した場合において、従業員の身体生命の安全を確保することを第一に考えています。事業所においては、インフラ停止によるブラックアウト時の対応として非常用電源の確保、プラントの安全停止と早期復旧の対応を順次進めています。
そして、取引先に対する安定供給のために、在庫の適正化や複数購買を推進し、災害対策規程の見直し整備も継続的に取り組んでいます。また、グローバルな事業展開に伴い、従業員の駐在や出張の機会が増加し、海外での戦争、地震、テロ、暴動、感染症などのさまざまな災害に見舞われる恐れがあります。そのため従業員の身体生命の安全確保を前提に海外危機管理対策を進めています。

  1. 災害や事故などの不測の事態が発生した場合でも、事業をできる限り継続させ、また中断しても可能な限り早期に復旧、再開を目指す行動計画

社外からの評価

南陽事業所では、2017年12月に「認定保安検査実施者」の認定を再取得するとともに「認定完成検査実施者」の認定を取得し、2019年10月に認定中間立ち入り検査を受審しました。
四日市事業所では、2016年11月に同認定を更新し、2021年6月に認定更新審査を受審しました。
また、特定非営利活動法人保安力向上センターの外部評価を定期的に受けており、プラントごとの保安力向上に努めています。

事故事例研究

発生した事故・トラブルの再発防止には、原理原則に基づいて原因究明を行い、その場しのぎではない対策を立案、実行していくことが大切です。東ソーでは、問題の根本原因を探るために、ある事象が「なぜ」そうなったのかを繰り返し問うことで問題の本質を掘り下げる「なぜなぜ分析」などの手法を活用し、事故事例の詳細な検討・解析を行っています。また、事故事例を一元管理する「事故・労災情報データベース」の運用や、事故事例研究などを実施し、情報を共有するとともに、教育・訓練に事例を活用しています。

DX※7の活用

DXの導入を積極的に進め、プラントの安全確保や安定操業にも活用しています。
また、DXを推し進めるために不可欠なデジタル技術に精通した人材(データサイエンティスト)の早期育成を目指し、組織的な育成プログラムの構築に取り組んでいます。

事業所共通の監視システムの導入

DCS※8データ収集システムに蓄積されるビッグデータを活用した事業所共通の監視システムを製造部門に順次導入しています。監視画面で「いつもと違う」状態を迅速に発見でき、操作ガイダンスが計器室内に配置した大型モニターに表示されることで誰もが素早く同じように判断、操作することができます。

運転支援システムの導入

運転支援システムを導入し、運転技術やノウハウなどをフローチャート形式で可視化しました。運転技術の伝承・教育・手順書として利用しています。
さらに、経験的な知識で操作していた作業を理論・原理を基に自動化することで、安全かつ安定した正しい操作が確実に実行できます。

異常予兆検知システムの導入

機械学習を利用した運転異常の予兆検知システムを導入しています。
正常状態のプラントデータ間の相関性を機械学習し、得られた正常モデルと現実のズレから早期に異常を検知することができます。
また、機械学習は異常予兆検知だけでなく、品質の予測や生産性の改善などにも活用しています。

運転引き継ぎ日誌の電子化

従来の手書き運転引き継ぎ日誌を電子化し、作業履歴や運転情報、ノウハウを電子データ化しています。過去の運転情報の取り出しや三交替引き継ぎ時に関係者全員が情報を共有でき、効率化が図れます。さらに既存の保全管理システムと連携し、プラントの懸案事項と保全情報をリンクすることで最適管理を目指しています。

現場通信用タブレットの導入

製造現場に通信用タブレット(防爆対応品)を導入しています。作業現場と計器室が映像・音声通信を通じてリアルタイムに情報交換できることから、若年作業者の作業支援に活用しています。

計装機器診断システムの導入(スマートバルブ)

バルブの作動状態を連続的に監視し、解析ソフトにより計器異常を診断できます。設備故障の早期検知や最適な整備時期の把握などに活用しています。

無線式ガス検知器の導入

事業所の敷地境界に無線式ガス検知器を設置し、毒性ガス濃度を社内ネットワークシステムにてリアルタイムで監視しています。震災による停電時でもガス漏洩を検知可能なバッテリー内蔵式の無線ガス検知器を採用することで、ガス漏洩発生時に事業所外への影響を早期・確実に把握し、迅速に対応する体制を構築しています。

無線式振動・温度センサーの導入

事業所内の広範囲に設置される回転機に無線式振動・温度センサーを取り付け、振動と温度を社内ネットワークシステムにてリアルタイムで監視し、回転機異常の早期発見に取り組んでいます。将来展望として、振動と温度データを蓄積し、高性能の異常予兆診断の実現を目指しています。

ドローンの導入

四日市地域では、企業と行政が一体となって新技術導入に関する取り組みを進めています。この地域特性を活かし、ドローンの導入およびドローン操作要員の育成を実施し、タンクなどの高所外観点検に活用していきます。

ガスタービン エネルギーマネジメントシステムの導入

ガスタービン発電所建設に合わせて、事業所全体の電力・燃料バランスを一括監視し、最適なガスタービン発電量を計算するシステムを導入しました。計算結果を基に運転調整を行うことで、高効率運転による省エネルギーを図っています。

  1. Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)
  2. Distributed Control System(分散制御システム)
  • 運転引き継ぎ日誌の電子化運転引き継ぎ日誌の電子化
  • 現場通信用タブレット現場通信用タブレット
  • 無線式ガス検知器によるモニタリング無線式ガス検知器によるモニタリング
  • ドローンの導入による高所外観点検ドローンの導入による高所外観点検

事故の風化防止

2011年11月の第二塩化ビニルモノマー製造施設爆発火災事故を風化させないために、南陽事業所で安全モニュメントの設置や事故関連資料の保存・展示を行っています。また、発災日であった11月13日を全社「安全の日」と定め、各事業所で有識者による安全講話や安全活動発表会などを開催しています。
これらの活動を通じて、従業員全員に安全な会社をつくり上げる決意を浸透させています。

2020年度安全の日の活動内容

事業所活動内容
南陽安全講話各種リスクアセスメント手法の特徴とプラント安全への適用/元KHK理事・杉浦好之氏
(本社とテレビ会議)
安全活動発表会安全活動 取り組み発表
事業所(3課)、東ソーグループと協力会社(3社)
四日市安全講話各種リスクアセスメント手法の特徴とプラント安全への適用/元KHK理事・杉浦好之氏
(本社とテレビ会議)
東京研究センター安全講話なぜ事故や災害は起こるのか2020/元三井化学技術研修センター長・半田安氏
  • 安全の日 安全講話(南陽事業所)安全の日 安全講話(南陽事業所)
  • 事故関連資料の保存、展示(南陽事業所)事故関連資料の保存、展示(南陽事業所)
  • 安全モニュメント「安全の誓い」(南陽事業所)安全モニュメント「安全の誓い」(南陽事業所)

設備管理の強化

設備の健全化として、2014年度から約210億円を投資し、強化施策を推進しています。さらに2018年度からは「工事体制の強化」の取り組みを新たに始め、協力会社(工事会社)が関係する事故や労働災害についても対策を進めています。
2020年度は、労働災害の削減を目指し、発生した労働災害を基に、工事管理の仕組みに問題がないか検証する「工事体制の仕組み検証シート」を作成し、不備を是正してスパイラルアップを実施しました。今後はこの取り組みの効果を検証し、継続的改善を図っていきます。
南陽および四日市事業所では入出門の電子化により、入構者の教育、構内ルール違反の履歴把握も可能となり、ルール違反者に対しては再教育を実施するなど、協力会社員の管理強化に努めています。

事業所のセキュリティ

各事業所において、入出門の電子化を進めています。これにより事業所入構者の的確な把握が可能となり、有事の際の避難管理体制が整いました。
さらに、不審者の侵入を防止するなどの入出門管理の強化も図りました。
今後もさらなるセキュリティの強化に努めていきます。

  • 入出門の電子化(四日市事業所)入出門の電子化(四日市事業所)

安全技術への取り組み

さらなる安全レベルの向上に向け、プロセス安全を推進するための全社的な組織として、2020年6月、技術センターに「安全技術室」を新設し、安全工学を主体とした安全技術の導入に取り組んでいます。

高度かつ網羅的なリスクアセスメント

プロセス安全評価に多重防御層※9の考え方を採用し、プラント事故の防止策を幾重にも講じて安全レベルを向上させています。
リスクアセスメントの手法としては、HAZOP※10を主体とした従来の手法にFTA※11や異常反応解析などを加えることにより、高度かつ網羅的なリスクアセスメントの構築を目指しています。

安全専門家(プロセスセーフティエンジニア)の育成

安全技術の専門家を育成するための教育カリキュラムの策定に着手しました。
また、専門家育成の手段(教育カリキュラム)の1つとして、安全工学の専門課程がある大学に委託研究生としてスタッフを派遣する取り組みを2021年度から始めました。

保安設備検証の推進

機械学習などを用いた運転支援

腐食診断などの装置材料解析

実習設備などを使用した化工技術教育

重大トラブルの解析助成 他

  1. プラント事故の防止策を複数の段階(階層)で構成する仕組み
  2. Hazard and Operability Study(運転を阻害する事象が発生した場合の結果を予測し、必要な備えができることを確実にするための手段)
  3. Fault Tree Analysis(製品の故障、およびそれにより発生した事故の原因を分析する手法)
VOICE

「安全技術のエキスパートを目指して」

横浜国立大学 三宅・伊里研究室技術センター 安全技術室 保坂 直輝

2021年4月より横浜国立大学 三宅・伊里研究室に在籍しています。
東ソーではこれまでプロセスセーフティエンジニアは育成していませんでしたが、より本質的な安全を追求するには、安全工学に精通した人材育成が必要であるということから、今回安全工学を学ぶ委託研究生として派遣され、勉強の日々を過ごしております。
大学では、物質が持つさまざまな危険性や、化学プロセスに潜む危険、安全性評価手法などを学んでおり、改めて安全の重要さと奥深さを常に感じております。
ここで学んだことを、今後の業務に反映し、東ソーを世界一安全な化学メーカーにするために安全活動を推進していきたいと考えています。

技術センター 安全技術室 保坂 直輝