05 Challenge

東ソーが向き合うもの

地球に優しい排水処理薬剤の開発で、
世界中から求められる存在へ。

工場排水から有害な重金属を取り除き地球環境を守る。
この緊急課題にどのような答えを導けばよいのだろうか。

Introduction

工場排水処理において有害な重金属を取り除く“重金属処理技術”への社会的要請が高まっている。築地の豊洲移転問題においても浮き彫りにされた社会テーマでもあり、今後ますます、その重要度は増していくと考えられている。国内の排水基準の強化はもとより、中国をはじめ海外においても基準値の見直しが図られ、重金属処理薬剤の需要が世界中で高まる中、東ソーが取り組んでいる挑戦に迫った。

Answer

東ソーが導いたもの

東ソーにはもともとゴミ焼却灰に含まれる有害な重金属を処理する国内トップシェア製品「TS-300」があり、この分野のリーディングカンパニーである。しかしながら特許失効の時期を控え、これに代わる新たな処理薬剤の開発が急務になっていた。そんな中、有機合成技術(特にキレート技術=重金属捕捉)を活かした排水処理薬剤の開発に成功。競合他社が安全性に問題を残す状況を尻目に、新基準に対応した優れたサンプルの提供は、国内外から高く評価され、一気に世界の市場シェアを獲得する勢いを見せている。

Start

グローバルビジネスへの発展を視野に始動。

工場排水に含まれる重金属は毒性が強いものが多く、微量であっても繰り返し摂取すると体内に蓄積されて中毒症状を起こす。そのため環境基本法で排水基準が適用され、基準値もますます厳しくなってきている現状があった。これに対し、東ソーはどのようなアプローチを取ったのだろうか。

服部:「国内の排水基準が強化される中で、排水の種類によっては従来剤では処理能力不足となり、新基準に対応できないケースも出てきていました。特にカドミウム、亜鉛の基準値が厳しくなり、それをクリアする薬剤がほとんどない状況。さらに従来剤には、作業時に有毒な硫化水素ガスが発生するといった、安全性に課題を残していました。逆に言えば、この課題をクリアすれば、市場に新たな価値を提供できるとも言える状況だったわけです」

木佐貫:「また、特に中国において重金属に対する厳しい排出基準が設けられたのを機に、一気に需要が拡大する流れが生まれ、そのチャンスを掴むべく各社がこぞって参入。世界中で新たな排水処理薬剤の研究開発競争に熱が入っています。もちろん東ソーも、いち早く注力分野をゴミ焼却から排水処理へ、ターゲット市場を国内から海外へ、というシフトチェンジを決断しました。グローバルビジネスへの発展を視野に、研究から製造そして営業までの布陣を整え、動き始めていました」

服部:「開発にあたっては、まずは目的金属であるカドミウム、亜鉛と良好に反応する化合物を、文献調査によって探索することからスタートしました。そして候補化合物の合成と処理試験、評価を繰り返しながら、スクリーニングを実施。新基準をクリアできる化合物の絞り込みを行っていったのです」

Profile
木佐貫 紗也佳(左) 
服部 正寛(右)
有機材料研究所 環境化学グループ

Challenge

排水新基準クリアへの仮説・検証からどこにも負けないサンプルの創出を。

しかしながら、排水新基準クリアへの仮説と検証から導いた、有機合成技術による薬剤サンプルは当初、従来剤と比べて処理能力の面でほぼ同等の評価で、改善の方向も見つからない状況だった。

服部:「突破口となったのは、薬剤処理物の体積が従来剤と比べて大きいことに気づいた点。これを起点に、処理不全改善につながる薬剤因子の可能性を追求しました。多様な専門分野を持つ先輩社員たちの知見も取り入れ、キレート技術を活用する新たな仮説・検証の末に、従来剤の性能を大幅に上回る薬剤の開発に成功したのです」

木佐貫:「当初は、1サンプルにつき、調製→処理試験→評価という3段階の検討プロセスに3時間程度かかっていましたが、独自の検討方法を確立することで、プロセスを30分に短縮することができました。これも開発の成功を支えた大きな要因だと思います」

現在、薬剤は量産化検討の段階に入っている。ラボスケールからプラントスケールへ、製造法の検討と試作が行われている。今後は、実排水設備での性能試験を行い、安全性評価、法対応などの段階を経て、上市となる予定だ。

木佐貫:「同時に、製品PR用技術資料の作成も行われています。私たちが目指すのは“東ソー処理剤=高機能”というブランドイメージの構築です。そのためにはPR戦略が重要な鍵を握ります。また、特許戦略にも万全を期して、グローバル市場において優位に戦える製品としての完成度を目指しています」

And Next

国内市場はもとより中国市場と向き合い、新たな環境ビジネスをダイナミックに動かす。

試作薬剤をメッキ工場などに提供して、処理試験と評価を行うサンプルワークは順調に推移。同時に量産化検討も着実に進んでいる。また、水処理分野に強いグループ会社とともに販売網の構築にも着手。さらには中国市場を視野に入れて、東ソー上海と協働し、顧客開拓もスタートしている。今、まさに新しい環境グローバルビジネスが一気に動きだそうとしているのだ。

木佐貫:「すべてが前例なきチャレンジの連続ですが、私たちの取り組みは、“目には見えないけれど、大きな社会貢献を果たして革新的な環境保護の実現を目指していくこと”。そんな意識に突き動かされて、毎日がとても充実しています」

服部:「排水処理に関わる市場は、今後も飛躍的に伸びていきます。ひとつの薬剤では処理できず、複合的な処理が必要な排水もあり、これらをソリューションする高度な技術が求められる時代が必ずやってきます。現在では、水で希釈したり、何かに吸収して捨てるという処理を行っているケースもまだまだあり、これらも含めて抜本的なソリューションを提供できる企業が世界中から求められる時代が到来するでしょう。そんな将来に備え、どこよりも早く基準値クリアの最適解を提供できる“最強の環境化学チーム”であり続けること。それが私たちの変わらない挑戦テーマですね」

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