2011.03.01

ニュースリリース

太陽電池透明電極用新規材料を開発

太陽電池透明電極用新規材料を開発
―エネルギー変換効率を大幅に向上―

 東ソーはこの度、太陽電池の透明電極に適用できる酸化亜鉛系およびインジウム系の新規材料を開発しました。太陽電池の透明電極は、太陽電池の種類により亜鉛・アルミニウム酸化物(以下、AZO)やインジウム・スズ酸化物(以下、ITO)が用いられていますが、今回当社が開発した2種類の新規材料は、光透過率および耐久性を高めることにより、従来材料と比較して1%(絶対値)以上もの大幅なエネルギー変換効率の向上を実現しました。これらの新規材料は、今後の太陽電池の性能向上に貢献することが期待されます。

 太陽電池で用いられる透明電極には、1.可視光から近赤外線にわたる広い波長領域における高い光透過性、2.太陽電池内に取り込んだ太陽光を効率よく利用するための高い光閉じ込め効果、3.耐熱性、耐湿性といった高い耐久性が要求されています。
 今回当社が開発したAZOは、赤外波長領域までの高い光透過性を有するとともに、耐熱性と耐湿性を高めることに成功しました。また、本材料で形成した透明導電膜は、従来材料と比較して、表面に理想的なテクスチャー構造(凹凸)を容易に形成させることが可能となり、極めて高い光閉じ込め効果を得ることができます。具体的には、薄膜シリコン系太陽電池セル(単接合)において、従来材料と比較して1%(絶対値)以上の変換効率向上を実現しました。なお、実際に評価を行った太陽電池研究の第一人者である東京工業大学の小長井教授から以下のコメントをいただいています。
「薄膜シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率の向上には、まず入射光を光吸収層に閉じ込める表面形状制御と赤外領域まで高い透過率を示す透明導電膜の開発が重要課題となっており、世界の研究機関が先を争って研究開発を進めているところである。今回、大面積化、低コスト化が可能なAZO系新材料が開発されたことで、将来の変換効率達成目標値18%に一歩近づいたと言える。」
 一方、ITOにつきましても、AZOと同様に赤外波長領域までの高い光透過性を有するとともに、耐熱性と耐湿性を高めることに成功しました。本材料で形成した透明導電膜は、CIGS(CuInGaSe)系太陽電池において、従来材料と比較して1%(絶対値)以上の変換効率向上を実現しました。

 これらの新規開発材料は、0.1%単位で変換効率を向上させることに注力している太陽電池業界へ与えるインパクトが大きいものと考えています。今後、ユーザー紹介を開始するとともに、更なる改良に向けた開発を継続していきます。