特集2 安全改革の取り組み
「安全な化学メーカー」の再建に向けて

二度と事故を起こさないために

東ソーでは、2011年11月13日に発生した南陽事業所の第二塩化ビニルモノマー製造施設爆発火災事故を風化させることなく、二度とこのような事故を起こさない「安全な化学メーカー」を再建するため、安全改革に取り組んできました。

安全改革指針の発行

爆発火災事故の背景となった課題を解決するため、2012年6月26日に「安全改革指針」を発行しました。

安全改革指針に基づいた安全改革活動を推進するため、南陽および四日市事業所に副事業所長をチームリーダーとする安全改革推進チームを、2012年8月に設置しました。

安全改革活動の取り組み

これまで5年間にわたって、安全改革指針に掲げた5つの項目に取り組んできました。

当初は、安全改革推進チームが主導していた取り組みもありましたが、現在はほとんどが各製造部門・管理部門の業務に取り込まれ、安全改革が通常業務として現場に浸透しつつあります。

代表的な取り組み事例を、下記で紹介します。

安全改革指針

[達成目標]

  • 二度とこのような事故を起こさない「安全な化学メーカー」となる。
  • 従業員が安心して働ける職場とする。
  • 地域住民をはじめ社会が信頼して付き合える会社になる。

[安全改革指針の要旨]

  • 社長の決意
    社長は、安全が経営の根幹であることを再認識し、必要な経営資源を配分するとともに、その決意を全従業員と共有する。
  • 安全文化の醸成
    安全活動の総点検を行い、従業員一人一人が自ら考えて行動する、実効性の高い活動に変革する。
  • 情報の開示と活用
    事業所は、緊急時の状況等について、正しい情報を迅速かつ適切に地域住民に提供する。また、保安・事故情報は、これを確実に有効活用する。
  • 教育、訓練の充実
    技術と安全の教育・訓練をより充実させ、理解度・習熟度に応じた柔軟な教育システムを再構築する。
  • 継続的な改革、改善
    安全改革の活動が一過性のものとならないよう、全ての従業員が今回の事故を忘れず、この安全改革を継続的かつ確実に実行する。

1 社長の決意

社長による計器室訪問

従業員との直接対話(2016年9月)

2012年度から毎年、社長が南陽および四日市事業所の製造現場に足を運び、安全に対する社長の考えを従業員と共有するとともに、現場の声を直接聞いてい ます。

現場の声を直接聞くことで、必要な改善に対する迅速な経営判断につながった事例もあります。【例:排水処理設備の強化、遊休設備の撤去、予防保全の強化など】これまでの5年間で、延べ164ヶ所の計器室や事務所を訪問し、4,000人近い従業員と対話しました。

2 安全文化の醸成

KYT活動

作業前のKYTミーティング

南陽事業所では、外部講師を招いて従業員全員がKYT*1講習を受講し、日頃からKYTを習慣化する仕組みを作って重点的に取り組んでいます。取り組みを始める前の2012年度に比べて、2016年度は従業員の労働災害が半減するなど、着実な成果が現れています。

四日市事業所でも、KYT活動を活性化するため、南陽事業所の良い部分も採り入れながら、事業所全体でKYT活動の強化に取り組んでいます。

5S(3S)活動

工具掛けを利用した整理・整頓

5S(3S)*2活動については、従来の活動が現場任せになりがちであったことを踏まえ、南陽事業所・四日市事業所ともに事業所一丸となって取り組んでいます。

事業所の中を常に整理・整頓・清掃された状態に保つことで、必要なものがすぐに取り出せるだけでなく、プラントや設備の変調にも気付きやすくなります。

維持管理のガイドラインを作成したり、相互パトロールをするなどして、5S(3S)を継続する工夫も行っています。

*1 【KYT(危険予知訓練)】 職場や作業にひそむ危険要因とそれが引き起こす現象を、行動する前に小集団で話し合い、危険のポイントや重点実施項目を認識する訓練。

*2 【5S(3S)活動】 整理・整頓・清掃・清潔・躾を行うことで、職場環境を維持改善する活動。中でも重要な整理・整頓・清掃の3つを指して、3S活動という表現も用いられる。

3 情報の開示と活用

リスクコミュニケーション活動

事故発生時の社内外の連絡、通報および広報体制を強化するとともに、有事の際の対応や注意点などを製品ごとにまとめた小冊子を作成し、関係行政や地域住民に配布しました。小冊子は、地域との対話活動(リスクコミュニケーション*1活動)にも活用しています。

事故事例研究(なぜなぜ分析)

なぜなぜ分析を活用した事故事例研究

発生した事故・トラブルの再発を防ぐためには、原理原則に基づいて原因究明を行い、その場しのぎではない対策を立案、実行していくことが大切です。

東ソーでは「なぜなぜ分析*2」などの手法を用いた事故事例研究により、事故情報の深掘りと水平展開に取り組んでいます。

IoTを活用した見える化

見える化ダッシュボード

2016年度は、IoT*3技術を活用したプラントの見える化にも取り組み、さまざまなシステムに散在するプラント情報を一元的に集約して大画面に表示する「見える化ダッシュボード」を導入しました。

見える化を進めることで、これまで気付きにくかった課題や問題点が見えるようになり、より安全なプラント運営につながることが期待できます。

*1 【リスクコミュニケーション】 製品などの危険性(リスク)に関する正確な情報を、地域の行政や住民と共有し、相互に意思疎通を図ること。

*2 【なぜなぜ分析】 問題の根本原因を探るために、ある事象が「なぜ」そうなったのかを繰り返して、掘り下げる手法。

*3 【IoT(Internet of Things)】 さまざまな物がインターネットを介して接続され、情報のやりとりや相互の制御が可能となるようなしくみ。

4 教育、訓練の充実

実習プラントでの実地訓練

訓練プラントでの研修(2017年3月)

2016年6月に、南陽事業所内に教育研修用の実習プラントを新設しました。

このプラントを活用した教育訓練を行い、プラントの挙動やその制御方法などを実体験することで、異常状態における対応力の強化を図っています。2016年度は14回の研修を行い、延べ70人が受講しました。

化学工学教育と認定制度

専門の外部コンサルタントと連携して、若手製造スタッフへの化学工学教育を継続的に行っています。教育終了後に行う達成度試験で一定水準を達成すると「Tosoh Senior Chemical Engineer」として認定し、モチベーションアップにつなげています。2016年度は15人が認定されました。

5 継続的な改革、改善

事故の風化防止

安全の日講演会(2016年11月 四日市事業所)

2011年11月の事故を風化させないために、南陽事業所で安全モニュメントの設置や事故関連資料の保存・展示を行っています。また、毎年11月13日を「安全の日」に定め、有識者による安全講話や安全活動発表会を各事業所で開催しています。

予防保全の強化

予防保全強化の取り組み(配管の外面腐食検査)

2014年度から2016年度までの3年間で約100億円の追加予算を投入し、予防保全の強化を実施しました。この取り組みは2017年度も継続しています。

課長決裁の改善予算

現場改善の例(配管フランジへの飛散防止カバー設置)

現場の課長が決裁できる「安全対策改善予算」により、現場改善を迅速に実施できる仕組みを構築しました。【年間予算:約4億円】

異常現象発生状況

安全改革の各種活動を地道に積み重ねてきた結果、事故は減少しつつあります。

*4 【異常現象の強度】 石油化学工業協会の事故評価基準によって、それぞれの異常現象の重大性を定量的に評価した数値。(米国プロセス安全センター(CCPS)の評価法に準拠)